アクチュアルなキーワード集作成を目指して Aiming at creating Effective Keywords
時流をとらえた二つの特集は様々な観察、体験、提案にあふれ興味深い。
第一特集はアカデミズムと設計である。速水清孝先生が提示する「設計の研究はあるか?」という問いに象徴されるように設計とアカデミズムは馴染みがいいとは言えない。その理由の一端は日本の建築教育がエンジニアリングを基盤に進められてきた歴史とも関係する。海外の大学で意匠の博士論文の主査をした時に二つの国の審査基準の違いに驚いた。その国(スペイン)では建築はどちらかというと人文的知であった。かくいう私も建築と人文的知の交叉するところを見据えているので既成のアカデミズムには居場所がみつけにくい。しかし私たちが現在学会の建築論・建築意匠少委員会やそのWGで議論している内容をふまえると、設計のためになる研究は幅広く存在していると言えるだろう。そうした中で設計の研究をさらに深く進めていくには二つの方向性がある。一つは質的研究の受け入れ幅を広げること。二つ目は水野大二郎先生が提示しているように仮設論証型研究のみではなく視点提示型研究の方法と審査基準を確立していくことであろうと考える。
第二特集はアカデミズムと出版。ご存知のように建築アカデミズムで最重要視されているジャーナルは学会誌である。しかし既述の通り設計とアカデミズムの馴染みはあまりよくない。それでもなんとか既成の理論形式の枠組みを備えて学会誌を発表の場とすることは可能であるがそれ以外の媒体を通して「設計に関わる研究」を世に知らしめることも多くなる。かくいう私もここに登場する編集者の方にお世話になっている。その時編集者は学会誌における査読者以上の意味と役割を担っている。著者は素材を生産する農民、漁民のようなもので、編集者はそれを調理する料理人である。両者の二人三脚によって一つの思考は形になる。今回の特集はそんな現状をよく示すものだと思う。しかしこれからはおそらくもっと自由に電子書籍などを通した出版の姿も見えてくるだろう。手前味噌だが、私の著書ももう直ぐ一冊電子書籍として公になる予定である。しかしそんな時代でもいやそんな時代だからこそ編集者の存在意義は重要であろうと思っている。