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Feb 2012

2冊の文庫本

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by 卓 坂牛


山田詠美の文庫本をアマゾンの中古で買った。両方とも値段は1円。送料サービス料は250円。定価は500円弱なのでだいたい半値。しかし同じ値段でも装丁が片方は新品同様。片方は半分剥がれている。実にバランスよく剥がれているので思わずわざとやったのかと思うくらいである。僕は本をきれいに扱わないのでこういうのはまったく気にしないのだが、本を大事にする人は同じお金払ってこの差だと怒るだろうなあ、、、、、、、。

塚本さんの東工大環境エネルギーイノベーション棟

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by 卓 坂牛


東工大に行って塚本さんの設計した環境エネルギーイノベーション棟を拝見した。緑が丘の駅のすぐわきに駅より長い細長い建物ができている。こんなに駅に近いと普通の人は東急線に関連する建物だと思うだろう。と言うくらい線路、駅に近い。なぜ駅にこんなに近く建てられるかと言うと建物のファサードと思しき太陽光パネルが山と取り付けられたファサードが工作物だからである。そしてこの工作物は太陽光パネルの熱を逃がすために本体と大きな隙間を持ってとりつけられている。この敷地にこのブログラムを与えられた時にプログラムで最も望まれていることを工作物でくっつけようとするところが塚本さん的だと思う。大学側のプログラムをあえて捻じ曲げることもせず、敷地も受け入れて愚直とも言えるほどにそれをそのままに表現するところが彼らしい。
この建物を見た後に未だ見ていなかった安田さんの図書館を案内していただいた。この建物はキャンパス計画の中で重要な場所を占め、それを上手に使いながら徹底的に作りこんである。先程の塚本さんの建物とは好対照である。隅から隅まで悪く言えば息苦しいほどに、よく言えば完璧なまでにデザインされている。2人の個性がとてもよくでている。
一日の内にこれほど対照的な二つの建築を見たのは初めてである。少々興奮した。

江戸時代の荒木町あたり

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by 卓 坂牛



Iphoneのアプリにもあるのだが、江戸時代の地図と現代の地図を比較できるマップを買った。『東京時代MAP』新創舎2011。この地図は江戸を東西南北のグリッドで22に分割し、1セクションA4見開き1ページ。縮尺は1万分の1。その江戸地図にトレペの現代地図が重ねられるようになっている。この地図で事務所の周りを見ると江戸時代に無かった外苑東通りが現代強引に南北の道を斜めに繋げているのが分かる。それ以外は家の前の津の守坂、それに直行する三栄通りも含めてこのあたりの現在の道はほとんど江戸時代からあるしその後増えたものもそんなに多くは無い。
実はこの地図で荒木町の江戸時代の様子も分かるかなと思ったが、そこは松平範次郎とだけ書かれた広い屋敷としか分からない。屋敷内の建物配置は昔の軍事機密のようなものだから地図には現れない。荒木町の道の形成は明治の地図を見ないとだめである。

OBのみで審査する講評会

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by 卓 坂牛


午前中国立新美術館で野田裕示個展を見る。久しぶりに心に響く絵を見た。http://ofda.jp/column/午後社会人大学院の試験をしてから一部(昼の部)の卒制講評会。常勤教員によって採点された37作品の中から選ばれた上位12名が今日発表される。教員の採点は既に終り優秀賞を含め順位は既についているので今日はOB会(それを築理会と呼ぶ)による採点の場である。会場にはOB20名、常勤非常勤20、学生100名くらいいただろうか熱気と緊張感。司会は宇野さん。
講評自体は常勤も非常勤も行うが最後の審査は選ばれた5人のOBによって行う仕組み。4人の建築家(薩田英男、川辺直哉、野田郁子、佐藤勉)と1人の構造家(加藤政寛)により12の中から先ず4つが選び出され議論の末に2つが残りそして一位が決められた。
一位を決める過程で最後に残った二つは日生劇場のコンヴァージョン計画と石切り場の再生計画。いずれも今ある何かに手を加えるというもの。新たにザ・ケンチクを作ると言う案はそもそも余り無かったし最後に残らなかった。でも実は僕の採点で一位はこの両者ではなかった。今日の12名の発表にさえ残らなかった。吉祥寺の路地に屋根をかけるという案だった。とてもコンセプチャルな試みだったので誰にも理解されなかったようだ。教員の採点表を見ても僕だけ95点で後は皆70点台。惜しいなあいい案だったのだけれど、、、、
講評会の多い年度末。これで全部終わった(と思う)。

嘘を書かないこと

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by 卓 坂牛

新聞作っている友人と会う。もはや現役の記者は引退して新人を教育する立場。そんな彼が新人の為に書いた文章を見せてもらった。その中にいい言葉があった。「記者になったばかりのみなさんは、わからないことはわからない、という勇気をもっていてください」その通りだと思う。そしてそれは新人の為だけの言葉でもない。
彼に新聞で一番大事なことは?と聞いたら「嘘を書かないこと」と言っていた。そうだと思う。事実がねつ造されたり、出所不明の情報が飛び交う中。新聞だけは頼れると思いたい。新人記者さん頑張って。

三廊下の家の検査に行ったが、、、

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by 卓 坂牛


去年甲府に作った住宅の一年目検査に向かう。あいにくの雨だったけれど着いたら晴れてきた。暖かい。一年目検査ではいつもいくつかの不具合が見つかり、それはそれで僕らのとてもためになる勉強の場である。しかし今回は到着して「不具合が何かありますか」と聞いても殆ど何も無い。中は実にきれいに使われている。トイレはまるでギャラリーのようである(上の写真)プラスターボードにも全くクラックが入っていない。平屋だと言うのもあるのかもしれないが、一応3.11では震度5強だったそうである。
この建物はクライアントがそれまで住んでいた中廊下の形式を現代的に蘇らせるというコンセプト。そして平屋の瓦ぶき。伝統的な形はそれなりに無理が来ないということでもあるのだろうか???
外国の建築紹介サイトを見た方がこんなコメント書いてくれている。
http://cotoba.jp/2011/07/06/three-corridors-house/
甲府の往復で三浦展+SML『高円寺―東京新女子街』洋泉社2010を読んだ。昨日は吉祥寺、今日は高円寺。二つの本を読んでいると急速に中央線沿線に惹かれていく。
高円寺はモノの消費の場ではなく、人の交流の場だと言う。飲み屋で出会った者同士が仕事を融通することがあると言う。そう言えば確か高円寺のワインバーのマスターから仕事をもらったことがある。それもその人の何かではなく、その人の友達の建物である。そんなつながりができるなんて確かに素晴らしい。
さらに高円寺の魅力の中で外部階段があげられていた。外部階段はだいたい木賃アパートにつながるのだが、アパートやめてブティックになっていたり飲み屋になっていたりもする。都市の立体性やアクセシビリティが高まると言う。さらに重要なのは外部階段が直接個室にアクセスできることこそが住人の自由を保証すると言う。マンションのように、エントランスホールを通って個室に向かうのは中央集権的建物だと言うわけだ。
この発想って坂本先生の集住のキーコンセプトである。都市へのダイレクトアクセスこそが都市的な住まい方だと坂本先生は言う。江古田の集合住宅はそのコンセプトでできている。三浦展と坂本一成が共通の価値観を持っているというのも面白い。

吉祥寺の楽しさ

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by 卓 坂牛

『吉祥寺スタイル』文藝春秋2007という本がちょっと気になって手にしたらなかなか面白い。著者は三浦展なのだが内容は吉祥寺の特徴を4つに分けてそれらの構成要素抽出と言う建築屋っぽいモノの見方。よくよく見るとこの本は三浦展の横に+渡和由研究室(筑波大学)と少々小さなロゴで書かれている。なるほど合点が行った。
渡さんは八潮で一緒に街づくりをする人。最初に会ったときから、なんだか意見の合う人だと思っていたのである。この本を読んでなぜ意見が合うかが分かった。
僕が街を評価する基準は前世紀末にアメリカで生まれてきたニューアーバニズムと呼ばれる思想に立脚している。まあ簡単に言えば「都市は歩いて楽しいこと」というような考え方である。そうしたらこの本で渡さんもニューアーバニズムが大事だと言っている。思想の根底が同じなのだから意見が合うのは当然である。
渡さんはニューアーバニズムに基づきながら吉祥寺の四つの特徴を1)歩ける、2)透ける、3)流れる、4)溜まると分類している。なるほどこの辺りも僕の研究室で今年アメ横研究をしていた分析概念と似ている。僕の学生はアメ横の通りの流れを滞留させるような要素である看板や、商品、オーニングと歩きながら店の奥が透けて見える開口の大きさを調べ上げ、アメ横周辺の6つの通りの特徴を明らかにした。
渡さんの吉祥寺の特徴で言えば、透ける要素、溜まる要素を定量化したわけである。ニューアーバニズムをもとに学生と右往左往しながらやっていたことは果たして意味のあることだろうかとふと疑問に思ったこともあるけれど、この本を読んで少しほっとしたし、未だやることがあるなと少し勇気もわいてきた。

2年から4年までの合評会

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by 卓 坂牛

2年生から4年生までの各課題の一等の作品の合評会を行った。一部では昔からやっているが二部では今年初めて。今年から元気のある学生が発起人となって始めることとなった。非常勤の先生も10人くらいボランティアで来ていただくこととなり学生が集まるのか少々心配でもあった。なにせ既に休みだし学生の自主活動でもあるから。蓋を開けると結構集まりいつもよりゆったりとした広い部屋でのびのびと行えた。逆にこのくらいの人数(恐らく40人くらいだろうか?)の方が適量かもしれないと感じた。
最後に学生も先生も一人一票の全員投票を行った。それぞれ課題が違うし、もちろん低学年と高学年では表現のテクニックが違う。そこでプロダクトのモノとしてのクオリティよりも考え方のクオリティを評価してくださいとお願いした。
その結果なんと一等賞は2年生の住宅。二等賞も二年生の図書館。やっと三等賞が三年生で集合住宅である。そしてこの順位は学生の票を取り除き13人くらいの先生方の票だけでも同じだった(と思う)。学生も見る目があるということだ。
最後に先生方から自分が入れた作品とその理由を語ってもらった。それぞれに納得のいく理由である。学生にとってはとても勉強になる合評会だったのでは。
二部は社会人も多いからこのての会は原則6時以降にしか始められない。なのでなかなか多くの学生に発表の機会が与えられないのだが、できれば各課題一等、二等くらい発表してもらうと課題のイメージが担当してなかった先生にも伝わるし、もしかすると二等が一等を抜くこともあり得て面白いのだが、、、、、

駅の上に大学作ればいいのになあ

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by 卓 坂牛

娘が大学受験中。今日は既に合格した第二志望の大学の入学金払い込み締め切り日であり第一志望の大学の合格発表日。運よく第一志望に合格。素晴らしい。入学金を無駄にせずに済んだ。親孝行もの。
夜N設計のM先輩と高校の同級生Aと3人で会食。世の中不思議なもので、同級生のAがN設計のクライアントになっている。ということをFace bookでM先輩が知らせてきた。それで3人で食事と言うことになった。
指定された神楽坂のレストランに行ったらさすが大企業のお二人が会食する場所は違う。和風のテーブル席でフレンチ。ワインもたいそう美味しかった。
同級生のAはM不動産に勤めているが現在系列会社の取締役。その会社はN設計が設計した東京駅の大丸の上。家から殆ど外を歩かず会社に行けてとても便利だと言う。
そうか、、、、駅に大学作ったらこんな便利なことはないなあ。考えて見れば駅の上にあるのはデパートやホテルとは限らない。大学だって図書館だって(そんな卒計があったなあ)病院だってあっていい。なんでも駅の上にあると町が活性化しないからやり過ぎはまずいけれど、理科大のように社会人相手にするなら駅の上は最高だな。東京駅の上に大学作ったら小田原、軽井沢、辺りからも通学できる。

信大卒制発表会

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by 卓 坂牛


午前中の新幹線で長野へ。久しぶりに信大に来た。そして初めて入る武道場。木造の小屋組みが素晴らしいここで修士設計と卒計の講評会を行った。彼らは大学の中では講評の機会が与えられなかった可哀そうな輩である。論文付き設計のつもりだったが、指導教員から論文だけで修士修了レベルに持っていくことという義務が課せられ、設計にかけられる時間がとても少なかったようである。そのハンディキャップの中ではよく頑張ったと思う。そしてこういう会を学生だけで企画したのは素晴らしい。ゲストには僕と、僕の研究室OBで現在中国のMAO設計でディレクターをしている神山君(その昔東京コレクションで2賞をとったツワモノである)そして藤本事務所OBの加藤比呂史君の3人。発表者なんと5人。
先ずはゲスト3人のショートレクチャーを行いその後講評に移る。彼らは心理学、歴史の研究室で視覚、色、触覚などの空間把握テーマで論文を書いている。よってコンセプトの部分がとても厚い。しかし残念ながら建築の構築で時間切れとなっている。そんな中アルゼンチンに留学していた香川君が最終的な議論の末最優秀賞。マッピラに行っても修士でやったことを忘れずに。論文に振り回された他の諸君も論文でやったことは必ずや役立つはずである。がんばってください。