スチュワート先生、山道さん、塚本さんありがとう
朝10時にアルゼンチン大使館の柏倉さん、国際交流基金の鈴木さん、ディビッド・スチュワート先生、塚本由晴先生、山道先生到着。東工大の留学生も10人くらいやってきた。加えてダニエル、ロベルト、私の6人が今日のジュアラーである。9チームが15分ずつプレゼン、クリティークをして12時半頃までにすべてのプレゼンが終わる。プレゼン、質問、答えは全て英語。学生は悪戦苦闘したが、まあよく準備したかな?月曜日に始まり4日間弱の作業でここまで来れたのはなかなか立派なものである。その後6人のジュアラーの投票で4チームが選ばれ議論。結果は得票数順となる。最優秀はスラムに極力触らず小さな削除と付加を巧みに行ったチーム2の案となった。ここの議論にもう少し時間をかけられたらよかったのだが、残念である。
1時から学生を囲みサンドイッチパーティー。最後にダニエル、ロベルトにコメントをもらい2時に無事終了。疲れたー。3時10分の新幹線に乗るべく東京駅に向かう。
アルゼンチン文化参事官との会食
午前中ワークショップ二日目のエスキスチェック。昨日より格段に良くなっている。ロベルト・ダニエルも真面目に驚いていた。そして日本の学生は多様性があると言って褒めていた。それは僕も感じているのだが、アルゼンチンでは教師の力が強く、学生は教師の望みをかなえるような作品を作る。僕らは彼らのアイデアを伸ばしたいと思って接している。そのことをダニエルに言うと。僕を見ていると実そう思うと言う。そしてそれが教師のあるべき姿だと彼は言う。さて明日どういう作品が出来上がるか楽しみである。午後会議に出てから修士設計のエスキス。信大からも門井がやってきてエスキスチェック。事務所に寄ってから信濃町に。アルゼンチン大使館の柏倉さんとファビエルとロベルト、ダニエル夫婦と会食。実にフランクで楽しい食事だった。さて明日またファビエル、柏倉さんがファイナルレビューに来られる。楽しみである。
カフェで仕事
午前中アルゼンチンワークショップエスキスチェック。9チームの熱気のある作業が続いているようだが、まだ頭の中が日本の常識みたい。もっともっとイマジネーションを働かそう。一体villaに住むのはどんな人たちなのか?一体どんな材料が使えるのか?何が彼らの生活を良くするのか?もっともっと人から考えないといけない。それはロベルトやダニエルが言っていたことである。今日は信州大学のスペイン語の先生橋本エリサさんがボランティアで松本から駆けつけてくれた。ありがとうございます。午後は9日のファイナルレビューに来てくれる塚本さんと荒木町でランチして彼の事務所(兼住宅)を見学。その後彼らを連れて表参道、根津美術館と行ったが美術館は未だ開いていなかった。夕方疲れてカフェへ。そこで皆一斉にIPADを開き本国との仕事のメール開始。なんだか1年前塚本さんとブエノアイレス行った時のことを思い出す。僕らも毎朝カフェに行って1時間以上無言でメール打ちまくっていた。
ブエノスアイレスのスラム矯正・再生ワークショップ
朝9時に理科大でダニエル、ロベルトと待ち合わせワークショプオリエンテーションのおさらいをする。10時ころ学生がやってきてワークショップの部屋の机の配置を直す。ほどなくアルゼンチン大使館の文化部参事官バビエル・ギリシェフスキと柏倉さんが到着。10時半からダニエル、ロベルトのオリエンテーションレクチャー。参加者は全部で40名。
今回のワークショップのテーマはブエノスアイレスのvillaと呼ばれるスラム街の再生更生である。こんなテーマは大使館としてはあまり面白いものではないだろうと思ったがダニエルたちのレクチャーに対して、大使館側はとても真剣に意見してくれた。話は世界の政治、経済にまで発展する勢いでとても高尚な(高尚過ぎる?)ものになった。1時半頃大学を出て御茶ノ水駅でスープを流し込み金町に向かう。宅急便で届いている展覧会パネル80枚強を開けて展示の順番、設置位置などを確認する。夜は我が家にロベルト夫妻、ダニエル夫妻を招いて夕食。日本で飲めるアルゼンチンマルベックにロベルトはご機嫌。
スチュワート研大集合
スチュワート研新年会。学科長だった篠原先生の計らいで1983年と84年の二年間だけ東工大に存在した研究室である。というわけでこの研究室から巣立った学生は僕の同級生が3人、下の学年に2人。全員で5人しかいない。こんな研究室は日本中見てもそうあるものではないだろう。人数が少ないので血の結束力を持っている。というのはまあ嘘だが、仲は良い。5人のうち一人はシンガポール、一人は北海道在住なのだがこの1月5日なら集まれるということでニコ玉のスチュワート家に大集合。その昔卒論を書いている時、しばしば訪れたスチュワート家でまだ赤ちゃんだったタケル君はもう30を超える。名門メルボルン大学で考古学を勉強したのだが、なぜかその後サンフランシスコの設計事務所で働き、ワシントン大学に行って建築の勉強中。ここがアメリカのいいところ。一生勉強する環境がある。
資本主義以外に我々は考えつかないのだろうか?
水野和夫・大澤真幸『資本主義という謎―「成長無き時代」をどう生きるか』NHK出版新書2013を読んでみた。世界は近代に入り大きな壁に向かって進んできた。スタートした時に壁があると分かっていたわけではないのだが、21世紀に入りその壁は明らかに存在していると実感できるようになってきた。そして日本のように既に壁にぶつかった国々が多くあり、中国のようにまだ壁までだいぶ距離がある国もある。元気な国があるうちにはまだなんとなく世界も活気づいているように見えるのだが、皆が壁まで来たら世界はどうなるのだろうか?皆がそういう疑問を持っているはずで、その疑問へどう答えたらいいのかそのヒントがあるかもしれないと思い読んでみたのだが、まあそんな答えが一冊の新書を読んで分かるようならだれも苦労はしないということが分かった。
それにしても経済音痴な僕としては、どうして50年前も今も我々は同じような努力をしているのにもかかわらず、その努力が報われたり報われなかったりするのだろうか?なぜ資本主義以外の経済システムは考えつかないのだろうか?といつも同じようなところを堂々めぐりしている。
読み応えがありました。
今年の正月は欲張らずこの本だけ読もうと選んだのが、エズラ・F・ヴォーゲル益尾知佐子・杉本孝訳『現代中国の父 鄧小平』日本経済新聞出版社(2011)2013である。上下巻合わせると1000頁を超える大部の書である。著者のエズラ・F ・ヴォーゲルはご存じのとおりJapan as number oneの著者であり、アメリカのアジア研究の第一人者である。
鄧小平については以前 矢吹晋『鄧小平』講談社1993を読んで気に入りこの話題の書が日本で出版されてすぐに買って積んでいた。彼のどこがいいと言えばやはりこのリアリズムにある。毛沢東が原理主義的でありその弟子である鄧小平ははるかに現実主義である。僕自身は原理主義的にモノを考える部分がある一方で原理主義だけでは物事が進まないと考えている現実主義者である。その意味で鄧小平は人生に多くの示唆を与えてくれる人である。一方で文化大革命を毛沢東の責任とするのではなく、死ぬまで権力が一人の人間に集中してしまう政治システムの問題と捉え得た割には自らの政治権力を80台まで維持したのは少し長すぎたのではないかとも思っている。彼に気に入らないところがあるとすればそのくらいかもしれない。