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Mar 2015

西谷さんと楽しいトーク

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by 卓 坂牛

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先週京都精華大学でファションを教えていらっしゃる西谷真理子さんからメールをいただいた。僕の教え子でファッションに興味がある学生がいると聞いていたのでお会いしたいとのことだった。西谷さんは『相対性コムデギャルソン論』フィルムアート社2012の編者であり、そこで私を呼んでアンリアレイジの森永さんとの鼎談を企画してくれた日本を代表するファッションジャーナリストの一人である。その鼎談の中で僕が信大のゼミでファション本を読ませていたら、装苑賞に出して最終まで残った学生がいると述べていたのである。それを覚えていてメールをくれた。というのも彼女は精華大学で建築家と組んで授業をしており、ファッションと建築の関連性にとても興味があり、私の興味と共通するのである。今日の話は面白かった。3時間半くらい教え子たちを交え話続けた。ファッション界にも建築界同様、上手いのと下手なのがいて、頭で考える奴と、手が動く奴がいるということが分かった。ファッション界は下手なのとか、頭で考える奴はいないものと昔は思っていたが、川久保玲はやはり頭で考える走りであり、森永さんもそうなのである。

就職難は今も昔も同じだった

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by 卓 坂牛

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大学で就職幹事をしているからではなく、単に著者が好きなので難波巧士『「就活」の社会史』祥伝社2014を読んでみた。一番の驚きは、就職難なんてこの100年間しょっちゅう有り、高学歴の方が職がないなんていうこともよくあり、バブルの頃くらいではないか売り手市場なんていうことが分かった。そんな時に就職した私は歴史的に幸運な人間だったということだ。驚きその2戦前の給与は学歴で分類されていたこと。例えば三菱ならば、①帝大40円 ②一橋、神戸38円 ③地方高商、早稲田政経科32円 ④慶応28円 ⑤早稲田政経専門科25円 である。帝大と慶応で3割違ったなんて今じゃ信じられない話であるがこれが事実だったそうだ。旧制高校をでればほとんど帝大に行ったのだろうから、この給料分くらいの学力差はあったのかもしれないが、、、

いただきもの

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by 卓 坂牛

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先日クライアントに羊かんをいただいた。要冷蔵なので冷蔵庫にいれておいたら案の定忘れてしまった。幸い本日賞味期限ぎりぎりで気がついて皆でいただいた。羊かんだと思っていたがこれは麻布昇月堂の一枚流しあんみつ洋かんとうとても有名な和菓子らしく普通の羊かんとは食感が違ってさらっとしている。
その箱と並べておくのも不自然だが、昨日研究室のルイスに本場グアテマラのコーヒーをいただいた。グアテマラコーヒーはグアテマラ現地ではさほど強い印象がなかったのだが帰国後ルイスにもらって飲んだらとても美味しかった。それからグアテマラコーヒーファンである。豆でもらったからミルを買おう。

アンリアレイジの今年のパリコレ

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by 卓 坂牛

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ファッションジャーナリストの西谷真理子さんから深夜のメール。アンリアレイジのパリコレがライブでネット配信されますよというお知らせ。しかしそのメールを開いた時にはとき既に遅し。その後style.comにレビューつきでアップされた。40枚のスライドショーを見て途中で気がついた。この服の真ん中の白はスポットライトではないということに。
森永さんの去年のコレクションは影でその時も妙にコンセプチャルでまるで建築の発想だとおもっていたのだが、今回もかなりそうだし、ある意味トリッキーでもある。と感じていたらレビューにもそんなコメントがあった。Fabric research, however, was absolutely outstanding: This was the kind of stuff that can really push fashion forward. Yet, the conceptualism seemed to dilute the innovation in a sea of black and heavy shapes.

篠野氏の次の仕事は小説家

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by 卓 坂牛

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3月末で東工大を退職される篠野志郎教授からアルメニア研究の総集編の如き本を頂いた。タイトルはHistoric Christian and Related Islamic Monuments in Eastern Anatolia and Syria from the Fifth to Fifteenth Centuries A.D.(彩流社)と長い。日本語タイトルは東アナトリア・シリアの歴史建築となっている。しかし中を見るとアルメニアもグルジアも含んでいる。1998年から17年に渡り、この地域の建物を見て回り、単に実測を重ね歴史的検討を行うのみならず、崩壊の危機にある建物については構造検討まで行った。そうした功績を讃えられて彼の地の勲章を授与されたと聞く。
この書に示される調査は結果的に氏のライフワークとなり、ライフワークは様々な可能性をあきらめる中で成立していると氏は語る。まったくそうだと思う一方で、さまざまあきらめたモノの中にこれだけ素晴らしい光景や建築に出会えること以上の可能性があったのだろうかと問うてみたくなる。私だったら諦めに諦めがつく。
さてしかし、氏はまだ65であり80まで生きるとしてもこの調査を行った年月くらいは残っているのである。先日見た氏の肉体(裸を見たわけではないが)からすれば同程度の調査を行う余力が残されていそうである。しかし私としてはもう研究には終止符を打って、実は氏が諦めていた小説業に専念して欲しいと思っている。群像新人賞を受賞した30年前に戻り今はもはや行けぬ地となったシリアを舞台にラブロマンスを描き、爺芥川賞作家になってあとに続く凡人たちの目標となって欲しいと願う次第である。

紅灯の巷の誘惑に負けない

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by 卓 坂牛

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夕刻一つ残った入研者枠の面接をした。つまり第一次希望者が定員に満たなかったということである。信大時代から含めて第一次入研希望者が定員より少なかったのは今回が最初。これは設計の人気が落ちたのか、坂牛の教育的態度が悪くて評判を落としているのか、新しく来た栢木先生の人気が絶大なのか、そのどれかだが、一部の学生の倍率が高いところを見ると設計人気が落ちているわけでもなさそうである。ということは坂牛の態度が悪いのと、それに反し栢木先生の教育が素晴らしいというこの二つの要因によるものと思われる。ここであまり態度をよくするとまた定員を大幅に超えて選択に四苦八苦するので少々態度を改善することに決めた。
というわけで面接を終えて空腹を抱えて帰宅。四谷三丁目から新宿通りを歩くと新宿通りの逆側に荒木町の入口から紅灯の巷がちらつく。おっと態度を改善すると決めたばかりなのでこの誘惑に負けず家路を急ごう。

ポルタもそう見えるか、、

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by 卓 坂牛

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三浦展『新東京風景論』NHK出版2014ではザハから、ゼネコンから、不動産屋から、十把一絡げにというか一網打尽にというかとにかく建築作る奴らはほとんど悪者になっている。建築ごときで国民が元気になるなんて言ってザハ案を密室で一等にするなんて国民を愚弄しているという調子である。最近こういう話はスペイン人建築家からも耳が痛くなるほど聞いてもう慣れっこになってしまった。
しかし読み進むと次に数少ない東京の素晴らしい町である神楽坂に新しくできたビル(おそらくポルタ)を六本木のディスコでしかもそれが理科大だと知って唖然としたそうだ。曰く「理科大には建築学科もあり、古い街並みを愛する研究者も学生もたくさんいるはずなのに、まったく残念、、、」と言いながら沖塩先生のことも挙げてこの人はペンシルビルの良さを理解したとして評価していた。

運命のゲシュタルト

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by 卓 坂牛

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オフクロが他界した時に実家の大掃除をして小学生の頃買って大事にしていたベートーベンの交響曲のスコアを発見した。理由は分からないが、5番と7番と9番があった。その頃はマジで将来は指揮者になろうなんて思っていたのである。それが長続きしなかったのは運動の方が好きだったからであり、自分が病弱な運動音痴だったら違う人生を歩んでいただろうなあと思う。自分にとってはもはや健康は価値だけれど、そういうわけで健康じゃない人は健康じゃないことで開ける人生もあるはずだなんて思ったりする。
4年前に発見したそのスコアは引き取って僕の本棚の上の方においていたのだが、最近建築グラフィックの図と地とかゲシュタルトかそのゲシュタルト間の論理性なんていうことを文章化していたら音のゲシュタルト(なんていう言葉遣いは僕が勝手にしているだけだが)があるだろうと思い運命を聞きながらスコアを開いて気がついた。なぜ運命は誰でも知っているのか日本人にとって最もポピュラーなクラシックのワンフレーズと言ったら運命ではなかろうか?その理由は何だ?もちろんあのたった4つの音の構成の迫力にあるといえばそうなのだが、これはそうたった4つの音。たった2小節なのである。交響曲はソナタ形式なので提示部、展開部、再現部という3つの部分があり最初に提示されるテーマはしつこく繰り返される。よって当たり前だがこのテーマは曲の背骨、心臓、脳みそなのである。それがたった2小節である。そんなソナタあるのだろうか?知っている人がいたら教えて欲しい。そしてこの強烈ながなり立てるような音量で演奏されるたった2小節は仮に絵画でいったら日の丸である。いやもっと小さな円でしかももっと輝度の高い色で塗られた絵画である。絵画で言えば強いゲシュタルトを形成するであろう。それは音楽でも同じで強い印象を耳に植え付けるわけである。
視覚にあり聴覚にあることは触覚や嗅覚にあるのであり、さて原稿を書かねば。

新進気鋭の社会学者?

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by 卓 坂牛

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『AV女優の社会学』という本が青土社から去年出てちょっと売れたらしい。その著者が『身体を売ったらさようなら-夜のオネエサンの愛と幸福論』幻冬舎2014という本を出していた。さすが幻冬舎売れ筋に飛びつく能力は半端ない読んでみるとなかなか痛快であるし、ホントかウソかわからない児童文学者の母親灰島かりhttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%81%B0%E5%B3%B6%E3%81%8B%E3%82%8Aとの会話が母娘の会話としては普通じゃなくて笑える。母親はICUを出て資生堂でコピライターやって渡英。帰国後児童文学者となり法政大学教授の鈴木晶と結婚して産んだ子供が、上記著者の鈴木涼美である。そして鈴木は明治学院高校から慶応に行き大学院は東大にいき、学びながら夜はキャバクラで働きついでにAVにも出演していたという文武両道派(?)である。一応今の肩書きは社会学者。
こういう本を読むと(いつでもではないが)もしこの著者が自分の娘だったらどうするだろうかと想像したい欲求にかられる。あるいは娘ではなくても自分の研究室の学生でもいいのだが、、、つまりは私よりは7つも年上の父親鈴木晶あるいは9つ年上の母親灰島かりの立場にいたらどういう行動に出るだろうか?と。灰島さんほどざっくばらんに「今誰と付き合っているの?あんたの生き方はしょぼい」なんて全てを知って割と建設的な提言をできるほど大人じゃないだろうなあと思い、かと言って少々怒ってその一部退廃的生き方を否定する確信はどこにもなく、文武両道(笑)をどこまで続けられるものか(その意味じゃあスポーツ選手と同じなのだが)と真剣に考えた挙句結論が出ずに「まあ好きにしたら」というちゃちな発言をするのがオチなのかもしれない。いやそれ以上は理屈ではあるまい。状況のディテールから直感的に判断するしかないので今ここで思考実験することに意味がないということなのだろう。