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Jul 2015

日本は豊かなのだろうか?

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by 卓 坂牛

海外出張から帰るといつものことだがたまった書類や、送られた書籍や、対応できていなかったメールなどに目を通す。これに結構時間が掛かる。加えて今日は大学院の一般入試一日目で答案の採点をする。今日一日で今日やろうと思ったことの9割は終わったのだがやり残しはある。重いものなので時差ぼけ頭ではうまくできそうもなく明日に回す。
バルセロナでは教師たちは(いや全ての人々は)7月で仕事は終わり、8月はバカンスだそうだ。少なくとも2週間。長ければ1ヶ月。日本に帰ったら休日かと聞かれていやいややることが山ほど待っていると言うとそれは可哀想にと哀れまれた。
不思議なもので、仕事がない、不景気だと言ってもバカンスはしっかりあるし忙しかろうが暇であろうが仕事は夕方で終わる。下手をすれば遅いランチで終わるスタッフもいる。これはバルセロナに特別なことではない。北欧に行ったら法律で働く時間の上限が決められている。
日本は豊かな国なのだろうかと改めて思う。給与は世界水準から見れば平均的なのだろうが、格差は統計を見ても明らかに広がりつつある。それを獲得するために皆終電まで働く。若いサラリーマンに自分の時間などまずない。教育費は恐ろしく高いし、食材も高い、住宅費もバブルがはじけて土地代が下がったとはいえやはり高い。それを払うと給与は残らない。一見経済的に豊かに見えるこの国の実態は必ずしもGDPなどの数字に表れたものを反映していない。
こんな国に誰がしたといえば民主主義国家なのだから皆の責任である。であるならば人々はそのことを主張して為政者に間違った金の使い方をさせてはいけないのだろう。生活の貧しさを改善するべく行動させるのが国民としての我々の義務である。
ヨーロッパでは教育は国が行うものであり限りなく無償に近い。住宅は現在バルセロナ新市長は若い人のために数千戸の住宅供給をすることを宣言したという。食材は日本の半分以下。オリンピックに防衛に使う金は最小限にして、教育、住宅、農業を真剣に考えたらどうなのか???海外に行くたびに思うことである。来月ブエノスアイレスから同じ気持ちで帰ってくると思うとあの間抜けな為政者たちにはほとほと嫌気がさす。

松永さんのリノベ本

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by 卓 坂牛

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帰国、帰宅すると頼んでいた数冊の本とともに松永安光さんから『リノベーションの新潮流』学芸出版社2015が送られていた。バルセロナにいた時にIAAC(International Architectural Association of Catalunya) が工場をリノベしたもので印象的でFBに載せた。するとそのことを本に書いたと松永さんからコメントいただき、加えて丁寧にご本をお送りいただくこととなった。時差ぼけでまだ頭がふらふらするので垣間見ただけだが、世界のリノベーション事例がアメリカ、西、東、ヨーロッパも北から南まで掲載されその幅の広さに驚く。いやあこれは時間がかかるお仕事だと思ったら、10年の蓄積であることが冒頭書かれていて腑に落ちた。リノベ事例集としては小林克広さんの2巻とともに必携の書であろう。

バルセロナで思う

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by 卓 坂牛

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バルセロナ最後の夜はエンリックと二人で食事をしながら様々な話をした。男二人で6時間もいただろうか。彼は今書いている博士論文を仕上げたらもうこれ以上人のことについて書くことはしないと言っていた。彼曰くTakuは既にArchitecture as Frameという自分なりの建築に対する主張を明確にしているが、自分は未だそこに至っていない。だからドクターをとって自分の建築を考えるスタート地点にたつのだという。
エンリックはそう言うが鈴木さんにはこう言われた。僕の『建築の規則』は分析の書であって建築家としての主張が書かれてはいない。それが今回のレクチャー「コネクションズ」では僕の主張が見られたし、加えてそれが内向きの建築の美学ではなく外に開かれたものであることに可能性を感じるとありがたい言葉をいただいた。しかしまだ主張が弱いのでそれらをもう少し良く考えて本にするといいとアドバイスされた。
こんな話もした。今回のBOSUのテーマはパグリックネスであるし、我々が建築の社会性を議論しなければならないのはもちろんその通りなのだが、建築は単なる社会からの要請だけでできるものではない。と僕が主張すると、そうだけれど、、、ヨーロッパではほとんどの建築は公共性を持っておりそれらはほとんどコンペでとる。だから建築である前に公共であらざるを得ないのだと。公共建築だからと言ってそれが公共を満たせば建築になるとは思わないと僕が言うとそうだなと頷いていた。
来年のワークショップをやる時までにアーキテクチャーアズフレームのヴァージョンアップをして新たなモノグラフを作りたい。それが鈴木さんやエンリクへの答えになるモノだと思う。そのタイトルは何なのだろうか?

エンリックの博士論文学外審査

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by 卓 坂牛

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昼にバルセロナ駐在日本総領事牧内さんにランチに招待いただいた。ガウディの弟子が設計した20世紀初頭の建物で子羊の肉を食べた。いつもタパスをシェアしていたのでこういう料理もあるのだと改めてスペイン料理の幅の広さを知る。来年来るときは公邸に招待するのであらかじめご連絡下さいと言われた。とても建築に理解があるのでありがたい。
午後はエンリックの事務所でエンリックの博士論文を見せてもらい説明してもらう。こちらでも博士論文の審査は5人で行い二人は学外審査員が必要とのことで私がその役を担うことになった。論文ができたら送られてきてそれにコメント書けば良いと思っていたのだが、そうではなくて5人の審査委員が一堂に会して20分程度のコメントを述べるのだそうだ。天内くんの博士論文審査のときと同様である。つまり審査日にバルセロナにこなければならない。UPC(
カタルーニャ工科大学)の博士論文審査が垣間見れるいいチャンスである。
ぼくとしては論文たるもののコンポジションや論証性のcriteriaは大学ごとにあるいは国の文化コンテクストで異なるだろうからそれにコメントしたくない。もし事実に反することが書かれていればコメントすると申し上げた。それにしても審査日は11月末か12月末ということですぐである。スケジュール調整が可能だろうか??
エンリク事務所で働く宮前を確認してエンリクと夕食。丘の上から夕日に輝くバルセロナを見ながら。改めてこの地の魅力にしびれる。総領事も言っていたが、スペイン語圏でもっとも住みやすく、食事が美味く、楽しく、安全なのがバルセロナなのだと。

ジョセップの住宅

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by 卓 坂牛

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バルセロナ在住の建築家小塙さんとお会いする。彼は僕のスタッフだった中島君と芸大の同級生で彼は UPCに留学して磯崎事務所、RCRで働きそのままこちらで事務所を開いて活躍中。RCRの展覧会。彼が担当した図書館、ヌーベルのリノベーション、伊東さん、RCR、ヌーベルのホテルなどを案内いただいた。その後彼の友人でもあり、バルセロナの若い世代の注目のアーキテクトジョセップの事務所に行き事務所を案内いただき、彼の設計したサンクガットの住宅を見せてもらった。歴史地区でファサドト屋根は触ってはいけない中で、中にコンクリートブロックと木で4階建ての家を作り上げている。内側の家に穴を開けて既存の古い壁を見せているのはヨーロッパらしいレトリック。内外に違う世界を作り上げていて印象出来だった。
彼とは共通のアルゼンチン建築家がいるのに驚き、さらに9月にアルゼンチンに教えてにくるという偶然も重なり、2ヶ月後の再会を誓う。
http://ofda.jp/sakaushi/diary/

パブリックスペース

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by 卓 坂牛

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エンリック、オルガ、学生たちとバルセロナのパブリックスペース視察。民参加型の公園。川沿いの緑地を保護しサイクリングロードを作るプロジェクト。60年代後半のソーシャルハウジングがパブリックスペースを挿入することで生き返ったプロジェクト。こんな場所は連れて来てもらわないとそう簡単に見られるものではない。バルセロナ町の成り立ちを別の角度から知る。最後はパブリックプレースとしてのビーチで遅いランチをとる。

ベンヤミン自殺の地

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by 卓 坂牛

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スペイン在住の建築家で付属の先輩である鈴木Yuichiさんにベンヤミン自殺の地Portbouに案内していただいた。ベンヤミンがナチスに追われ、フランコ支配するスペインに入国するのを断念して自殺した場所。ダニ・カラヴァンの海に吸いこまれるようなメモリアルスカルプチャーがある。静かな海に降りていく階段の先にはガラスがはまりさらにその先に階段は続く。そこには打ち上げられた貝殻、木片、砂が散乱する。近くに墓地がありベンヤミンの遺体はそこに5年間置かれていたとのこと。

コネクションズ

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by 卓 坂牛

P1030296.jpgカタルーニャ建築家協会で講演をさせていただいた。広い会場はバカンスの割には多くの人が来てくれてありがたい。今回はフレームとしての建築から一歩進んめてConnectionsというタイトルで話をした。自分の建築は人と人、人と物、物と物をつなぐ何かになっているのだろという事後的な観察を言葉にした物である。公共性というラウンドテーブルのテーマと関連する建築コンセプトになっているのは偶然というか、結局違う言葉だけれど同じようなことを考えて来たということなのだと思う。

総領事長と夕食

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by 卓 坂牛

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公共性をめぐるラウンドテーブル

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by 卓 坂牛

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エンリックとは日本のワークショップから公共性の話をし続けている。僕自身はその前からアルゼンチン、日本のワークショップ、シンポジウムを通してその問題を議論してきており、その延長でまたここバルセロナで公共性の議論をすることとなった。タイトルはPlaces VS Scenario。
議論はPublicとは何かという話からスタートしたのだが、いつしか住民参加型の建築とは何かにずれ、さらにネット時代の現在において、参加型のデザインは今までのようなワークショップが方法ならそれはもう古いというというところまで発展していった。社会学者も交えた議論は建築家とはまた少し違う場所に議論が進みそれはそれで面白いとことである。
久しぶりに英語のディスカッションだし、周りは全部スペイン人というディベートはなかなか土俵が違うので難しいものである。参加者は下記のような人たち。
Areti Markopoulou, IAAC Academic Director
Silvia Brandi, IAAC Academic Coordinator
Olga Sezneva, urban sociologist (University of Amsterdam, European University Saint Peyersburg)
Taku Sakaushi, architect (Tokyo University of Science)
Zaida Muxí, architect (Barcelona TECH)
Francesc Muñoz, geographer (Autonomous University of Barcelona)
Enric Masdop-Bosch, architect ( Barcelona TECH)