分類とは
先日読んでいた分類学の本マニュエル・リマの『The book of trees』の翻訳者である日本の分類学者三中信宏の『分類思考の世界―なぜヒトは万物を種に分けるのか』講談社現代新書2015を読み終わる。新書と思って、たかをくくっていたが分類学の基礎を形而上学的に語る本で難解だった。建築を分類するうえで参考となる話しは2つ。
一つ目のポイントは分類思考が縦軸となる系時的な可変性を捉える系統樹的思考と横軸となる共時的な生物相を問題とする分類思考に別れるという指摘である。建築分類ににもこの両方の思考が可能であり、現代を切り取るとするならそれは「分類思考」になるわけである。
二つ目のポイントは生物分類たるものそもそもは本質主義的に異なる種を類似度に従ってクラス分けするものだったが、現在では変化の物理的システムを明らかにするものだというわけである。ということは上記二つの分類思考においてはどちらかというと系統樹的思考が一歩前に出そうであるが、著者は双方が車の両輪だと述べている。
建築に置き換えてみると、変化のメカニズムを明快に語ることはおそらく不可能に近いだろう。それはあまりに多くの因子が絡んでおり、それを何かと特定することは生物のようには行くまい。そう考えると系統樹思考は緩い因果関係から推定することはできても証明することは難しい。一方で分類思考は生物では意味がなくても建築おいてはある時代のある状態を記述するものとして可能なのだと思う
Unite
来週末行くバルセロナではカタルーニャ建築家協会でレクチャーやシンポジウムをする予定。今朝は早く目が覚めてしまい、そのレクチャーの構想を練る。今おぼろげに生まれてきたアイデアは「ユナイト」。建築は「人と人」、「人と物」、「物と物」を一体化する装置あるいは場所。というもの。今までフレームとしての建築ということで「建築」よりも「建築外」のものが重要だと考えて「建築」はその「建築外」を切り取る「フレーム」だと言っていたが、どうも建築はもう少し積極的な意味を持っているはずだと思うようになってきた。もっとポジティブでもいいなと考えるようになった。
篠原一男が亀裂の空間を構想した時の文章を読むと亀裂の空間は両側の空間を非連続にするように見えて、実は両側の空間の連続性を強調すると言っている。それは確かにそうである。A,B二つの地点があったとしてその間には何もないほうがA,B間の連続性は高いと普通は思う。その間に物があればその連続性を邪魔するのだが、本当か?物理的にはそうかもしれないが、心理的にはその物があればこそ両側はその一体性を高めるとも言える。建築はそんな一体性を高める物としてあるのではないか?建築の様々なあり方がその双方の場あるいはその場にある人、物をユナイト(Unite)するのではないか??
ゲストの増田信吾さん面白い
先月最終稿をメールし1ヶ月ぶりの出版打ち合わせ。ほぼこれで脱稿と言えるのだろうか?これからは15日おきに3章ずつ赤を入れて送るとのこと。そして来月は巻末に載せる対談を行い、10月末にレイアウトも校正も終えて12月出版。なんと引用文章のチェックを編集者がしてくれるという。そしてその引用図書を取りに来るというのだが、170冊ある。ええ本当ですか???一体ダンボール何箱になるのだろうか??
夜三年生の製図合評会。ゲストは増田信吾さん。ショートレクチャーが面白い。ちょっとしたことに気づく建築。
International Architecyture Award 2015 松ノ木のあるギャラリーが受賞
昼ころ事務所に行くとChicago Athenaeum Museum of Architecture and Designから一通のエアメール。開けると一昨年水戸に設計した松ノ木のあるギャラリーがinternational architecture award2015を受賞したとの連絡と賞状。久しぶりに明るい知らせで元気がでる。世界中から60のプロジェクトが選ばれているのでまあ世界の作品選集というようなものでどれほどの価値が有るのかはわからないけれど、リーテム東京工場、中国工場、に続いて今回3度目の受賞である。どんな建築が賞をもらっているのかウェッブサイトを見るとなかなかの力作が多いので嬉しく思う。
https://chi-athenaeum.org/the-2015-awards/?page=5今後アメリカ、ヨーロッパで巡回展が行われるとのこと。
OOO オブジェクト指向存在論
Log の2015年冬号がオブジェクト指向存在論OOOの特集だと言う。それを枕に日埜直彦さんが磯崎新にインタビューをしている。途中の議論は置いておいて最終的にOOOがカント以前(人間中心主義以前)を標榜する理由をビッグデーターにおいているという日埜氏の推論はなるほどなと思わせた。社会は人との関係だけで動いているのではなく、得体の知れない人みたいなもののうようよしているということである。
インフォグラフィクスのオリジン
マニュエル・リマ 三中信宏訳『The book of trees 系統樹大全――知の世界を可視化するインフォグラフィックス』ピー・エヌ・エヌ新社2015の樹形図見てびっくり。樹形図は紀元前からある。その昔は聖書の解説、あるいは家系図、その後進化、分類に使われ、現代ではデーターのディレクトリーから統計データー表現まで、木は知のシンボル。およそ昨今沢山購入したインフォグラフィクスの実例のオリジンはほとんどここにあるように思う。その意味ではなかなか使える本ではないか?グラフィックデザイナーの中野豪雄さんも持っています!!分析ダイアグラムを描きあぐねている建築の学生諸君必読。