ブルドーザービル
jog arch 17 その昔コマツビルの屋上には真っ黄色の巨大なブルドーザーが乗っていた。最近でこそビルにゴジラを乗せたり宣伝に余念がないが50年前では稀有だろう。僕は建設機械の世界二大巨頭コマツの名をこのビルから知った。
増沢洵、中山克己の共同設計鹿島建設の施工で1966年竣工。パレスサイドビルと同い年である。外壁は帳壁ではなく耐震壁。六角形の開口が外壁にパターン模様を描く。材料は白系の大理石であっさりと、窓周りのディテールも静かにまとめてある。
二酸化炭素に弱いので外装に大理石の使用を認めない事務所もあるが、近くで見ても未だ元気そうである。厚さは何ミリだろうか。
このビル屋上に庭園があって週一回一般開放している。地域のシンボルビル。大事にしたい。
ワードローブを小さくしよう
ジェニファー・L・スコット神崎朗子訳『フランス人は10着しか服を持たない』だいわ文庫2017を読んでデンマークで教え子に言われたこと思い出した。彼は日本で履いていたオニツカタイガーの靴をデンマークでもずっと履いていたし、着ている服も毎日同じだった。「こっちの人は服は滅多に買わないけれど買うならいいものを買って毎日着ていますよ」と言う。王立アカデミーで教えているレネも同じ服。日本に来ても同じ服だった。
この本の話はフランスだけれどヨーロッパでは割とみなこういう感覚で生きているのかもしれない。そもそもだからこういう本を書いた著者はヨーロッパ人ではなくて消費大国アメリカの人なのである。パリで暮らして驚いたわけである。この本が日本でもベストセラーになるというのはまさに日本もアメリカ同様の消費大国だからなのである。かくいう私もそんな消費大国の消費人間でありこの本を読み驚いている。
先日大谷のお家を見た後で感想をメールしたらそのメールの返信に我が家に来ると次の日から自分の家の押入れのものを捨て出す人がたくさんいるんですよと書いてあった。彼のファミリーはまさにワードローブに10着しか服のない家だった。10は無理にしても、必要なものを必要なだけ着て、食べて、暮らすそんな生活を目指したい。そしてやりたいこともやりたくないことも楽しくやる工夫をして肩肘張らず静かに着実に生きていきたい。と思わせてくれる嬉しい本でした。
街中の小さなオフィス
jog arch 16 東京の特徴的都市構造は幹線道路沿いを商業地域として容積率を上げてその後背地を住居系にして容積率を下げスモールスケールの空間を担保している。そんなエリアに小さいけれど個性的なオフィスやお店があるのが青山あたりの楽しさである。永山祐子さんの湾曲したファサードは9年経っても不思議と汚れていない。北川原さんの395は30年経ってすっかり街に溶け込んでいる。中村さんのjewelry boxは246沿いだが何故かスモール。ガラスが波打っている。
日建の都市開発
先日日建の大松さんとすれ違い、「本読んだ?」というから「何を?」と聞くと「日建の都市開発の本作ったから送るよ」と言われ、さきほど届いた。日建の都市開発図鑑である。まあ大体知っているもの。全体的に見やすくてわかりやすいのだが、もう少し玄人向けにつくったらどうだろうか所詮専門誌なんだから。苦言を呈するなら巻頭の文章があまりにプア。これ読んで少しげんなりする。歴史的説明のこれからの展開の説明がまたあまりにお粗末。これからこそがこの本の主眼ではないのか?都市が数十年後に縮小へ向かう準備が語られなければ片手落ちでしょう。これまでの右肩上がりの時代を懐かしんでも仕方あるまい。
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