三浦哲哉という表象文化論の研究者が書いた『食べたくなる本』という本がある。この本は食べ歩きの本ではなく、食べ歩く人の書いた本を論じる本である。一節一冊で20節あり第1節はイントロなので19冊の食の本が紹介される。乱読好きの私としては全部読みたくなる。その19節目が酒の話しである。著者もかなりの酒好きでワインもかなり造詣が深そうだが自らワイン通ではないという。その理由は体系的にワインを飲む財力がないからだという。確かに何かを極めるのに手っ取り早いのは知識でも味覚でも聴覚でも自らの脳の中に体系化することである。その意味では僕もワイン好きだがワイン通とは言えない。体系化されていないからである。乱読ならぬ乱飲なのである。ワインがそうなら読書もそうである。かなりの乱読である。これは知識を体系化するには恐ろしく無駄が多い。ということは十分承知なのだがその時読みたいものについてが伸びてしまう。酒も本も同じである。
昨日来られた香港の劉教授が本棚の写真を撮っていた。何を撮っているのかと聞いたらル・コルビュジエの下に王羲之があるのが面白いということであった。フランスのモダン建築家と中国のクラシック書家が並んでいるなんて確かに愉快だが、それに気づくのは流石に中国の方である。が並んで置いてある本棚はそうないということである。
東南大学の郭先生が香港大学の劉先生とその学生3人をつれて来宅。郭さんにはコロミーナやウィグリーとともに東南大での国際シンポジウムに呼んでいただいたり、同済大学でのレクチャーをセットしてもらったりお世話になっている。建築の条件を既に買って読み(彼は日本語ほぼネィティブ)良書と褒めていただいた。建築の規則と建築の条件を中国語で出しませんかとお誘いを受けた。こういう本の需要が中国にはあるのだろうか?来春香港で国際シンポジウムを開催するのでとお誘いを受けた。テーマは建築の構築性と社会性の統合。僕らは先日社会性の有効性を議論していたのを思い出した。ところ変われば議論も変わる。
赤城下町、元町、矢来町あたりは袋小路が多い。新居の前面道路も袋小路の2項道路である。住人以外郵便、新聞、宅配しか通らないから静かである。その道に井戸がある。2項道路の後退で敷地内にあった井戸が道路内に飛び出たのであろうか?普通なら撤去させられそうだが残置している。井戸には災害時の水補給用と記されている。区の粋な計らいである。所有者に聞くと植物や水撒き用にもどうぞとのこと。有り難い。
今度審査をする博士論文自体はデーターでいただいているのでIPAD で開けて電子ペンでアンダーラインを入れる。しかしそもそもこの論文は著者の6つの著書を説明していくものなのでその著書を横に置いて眺めつつ。時折現れる建築家の実作をネットで調べながら読み進めている。話は面白いし6つの著作のうち1冊は日本語になっていて既読だし、1冊は原初に目を通したことがあるので興味深く楽しい。英語もそれほど晦渋なものではないので比較的早く読めるかもしれない。しかし問題はこの論文のどこに価値を見出すのかが今のところ見当がつかないところである。
新居の辺りは赤坂に比べて野菜も肉も魚も安い。特に野菜は感度的に安い。半分ベジタリアンみたいな僕には天国である。食べるところはもちろん沢山あるが毎日来たいと思う荒木町の鈴新のような店にはまだ出会えていない。予想されたが私向きの人文系の充実した本屋はない。カモメブックスと言うギャラリーのあるインテリアが素敵な店はあるがセレクトが違う。僕好みのワイン屋がないのは予想外だった。一家言ありそうな店はあるもののヨーロッパものしか手に入らないのは残念である。
しかし総じて住みやすい。その理由は、歩ける町のスケール、適度な緑と坂の風景、賑やかさと静寂の混在、近隣の親しみから来る適度な地元意識。などなど、、、
新居で好きなことのひとつは絨毯の階段の登り降り。階段は昔からディテールの見せどころで山のように名作があるが自作も含めてそれらは見るオブジェとしてデザインされている。そして重力に抗いながら抗って無いように作るから鉄やコンクリートむき出しで触視的には痛いし足触りは硬いものが多い。僕はロース派なので包まれたいし柔軟な触感を好む。だからディテールが消えて柔らかい角丸になる絨毯の階段は見てよく登り降りしてもっと良い。
早朝5時、いつもと違う道を通ってジムに行ったらこんな花屋に出会った。店は閉まっているのに売り物の花は店頭に綺麗に並んでいる。有り難いね。店の名前はジャルダン•ノスタルジック。
山梨に大学教育に求めるものはと聞いたら個性と言っていた。大学が違い研究室が異なってもみな金太郎飴みたいに同じだと言っていた。しかし外から見ると日建は日建が欲しい学生像を発信しているからそう言う学生が受験するのだよ。そして事実しそういう優等生を取っている。だから違う個性は残念ながら日建は受けないのだと思う。
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