●会所橋と命名した休憩フォリー
昨晩のビールが抜けない。アルゼンチンを思い出し30分ほど近所をジョギング。汗とアルコールが揮発した気分になってシャワーを浴びて「荻窪らーめん」という名のカップラーメンを食べて八潮に向かう。
八潮駅で槻橋さんに会う。彼は気仙沼から着いたところ。珍しくon timeである。さっき食べたばっかりなのにまたお腹が減ってきたのでコンビニでサンドイッチを買ってキックオフミーティングの会場に。そこには既に大勢の学生が集まっていた。信大が復活している。よくよく見ると、今帰や京谷などの懐かしい面々がいる。嬉しいね。理科大も心機一転日工大に負けない布陣である。
室内でのミーティングを終え。昨年の一つの成果である会所橋を見学。数十万円の予算で殆ど日工大の努力によって完成した。立派なものである。その後今年のヤシオノツカイカタの対象候補である用水路の親水空間を見に行く。ちょっと水の流れが悪くて水質が悪そうだが、雨が降ると結構流れるそうだ。今年はここに何ができるか???
今日はさっさと帰ろうと思ったのだが、曽我部先生、寺内先生、小川先生と浅草で夕食。槻橋先生は飛行機で神戸へ。
母校東京教育大学附属中高(現筑波大附属)の同窓会館(桐陰会館)のプロポーザル審査会が行われた。プレゼンのため久しぶりに附属中高に行った。土曜日は中学校が授業をしているし高校は部活動でグラウンドは大賑わい。女子フットサル部が練習をしている。最近の女子はとても上手である。天気もいいし本当にサッカーでもしたい気分。
10時に提出者全員が集合して各自A3二枚のプロポ案を提出。午後のプレゼンまでは一般公開とのこと。
なのでしばし学校内をぶらつき早めのお昼を食べる。スタッフのS君が「模型持ってきませんか」という。なるほどそれはいい考え。コラージュ作成用に1/50模型を作っていたが提出は要求されていないし、出していいものか分からず、持ってこなかった。しかしH先輩が1/200模型を持ってきていたので、それなら出そうと思い事務所に取りに戻る。屋根を一部剥ぎ取り、人を沢山立たせタクシーで運ぶ。午後の部ぎりぎりに間に合った。審査は専門委員として、益子先生、片山先生、家城先生、そして附属高校、中学それぞれ校長、生徒代表男女一人ずつ、父兄代表、先生代表などなど総勢15人くらいいらしゃった。
各発表に対し、専門委員は固より、父兄、生徒からも質問が続出。なるほどうちの学校の人たちは元気がいいや。
僕も生徒から「色はどうするのか?」「ガラスで囲まれたホールの音響はどうか?」など鋭い質問を浴びた。
全員の発表が終わり発表者は労をねぎらいビール。審査員は審査会。そしたらいつしか審査員たちもビールに合流。でも1位は教えてくれなかった、さてどんな審査結果になったのか?楽しみである。
アルゼンチンに行く前にリーテム東京工場を舞台にしたビデオを作りたいと思ってセットエンブの入江君とリーテムの社長に相談した。そうしたら社長が「一緒に作ろう。だけど条件がある。音楽は大友さんね」と言う。「それは素晴らしい、そうしましょう」僕は二つ返事で了解した。
ところが大友さんは三月とても忙しくて音づくりの時間がとれない。そこで東京工場は二瓶さんの映像に大友さんの既成の曲を合わせて一つの作品とし、水戸工場は大友さんに先ず音を作ってもらい、それに合わせて二瓶さんが映像を作ると言う普通の流れとは逆をすることになった。これも社長の方針である。普通映画だってなんだって映像を見ながらミュージシャンが音作るものだろうに、音楽作ってそれに合わせて映像撮るって普通じゃない。
吉祥寺のスタジオには大友良英さんサチコMさんなどすごいミュージシャンが既にだいたいの音入れを終えた状態だった。僕は大友さんの『MUSICS』岩波書店2008を片手にミーハー少年となってスタジオに行った。
5分程度の曲二本がとられた所で二本目の曲が流れていたのだが、それを聞いて驚いた。涙が出るほど美しいピアノの旋律にアコースティックギターがかぶさりあたかも大自然をバックした映画のラストシーンのようである。大友さんってこんな音作るんだ????あまりのその叙情的な音にただただ驚いた。その昔六本木でレコードぐるぐるまわしてノイズをぶんぶん出していたあの大友さんと同じ人とは思えない感じだった。
でも大友さんが「この音に工場のガチャーンとかギーンとか勝手に入れてね、この音消えちゃっていいから」とこう言うのを聞いてああそうなのかと納得した。
二瓶さんの映像がこれにどうかぶさるのかとても楽しみである。
野木の現場では大工さんが斜め斜めの屋根と格闘している。本当に頭が下がる。今日は夏のようないい天気。このまま梅雨がなければいいのに。工期との闘いは天気に大きく左右される。
現場の行き帰りに1カ月くらい前に半分読んでいた西谷真理子編『ファッションは語りはじめた』の後半の座談会を読んで面白い話に遭遇。川田十夢がAR(拡張現実)の話しをしているあたり。ARってIPHONEを店にかざすとメニューが見えてきたりするというあれである。現実強化とも言うらしい。
川田はそれをプロセスの「省略」と呼んでいる。「作品を対する人のフィードバックがどんどん短くなること」とも言う。そしてテクノロジーを使わない「省略」として富士そばでヒップホップを流すことだと言う。立ち食いソバやの富士そばではだいたい演歌が流れているけれど結構若い人が多く客としているのだから様々なプロセスを飛ばして、若い人=ヒップホップとつなげればいいと言うわけだ。
それをARと言うならば、タンゴ好きの多い荒木町で例えばとんかつ鈴新でタンゴショーなんて言うのも発展形としてありだな。
このプロセスの省略ってなんだろうね??とあるニーズに滅茶苦茶ダイレクトに反応するモノの作り方かもしれない。なんかそういう欲望が突如肥大化するような現れってありそうだよな。
午前中とあるクライアントと新しく借りるビルを見に行く。ネットで250㎡くらいあり都心ながら景色の良いビルの7階。ここに創造的なオフィス空間を作りたいという。流れるプールのように人が常時移動する空間にしよう、コア周りを真っ赤に塗って白熱ブレストスペースにしよう、ストレッチする場所を作ろう、コーヒーとクッキーが置かれている場所を作ろう、、、、アイデアはいろいろ浮かぶ。70人収容のこのスペースの仕事の効率が1割上がれば63人で70人分の仕事ができることになる。そう考えれば7人分の年収をこのオフィス改修にかけてもいいのでは??と社長に言ったら笑っていた。
午後事務所でコンペの打合せ。構造設計者と電話で話す。大きな問題はなさそう。耐火被覆を逃れるために軒高を4メートル超にするかどうか???
夕方大学へ大学院進学希望者と面接。推薦枠は成績上位者に限られるというのもお堅いルールである。デザインの研究室なんだからデザインできる人を採れる仕組みにしたいのだが、、、、
夜4年生の製図。パワポで発表させると個別のエスキスに比べて話が学生全体で共有できる反面、前回と同じものにほんの僅か+αの発表が横行する。加えてパワポで作りやすいようなマテリアルが並ぶ。スケッチや模型が殆どないと言うのはちょっとまずい。
今日は朝から大慌て。経理的な書類に追われ、大学来ると作らなければいけない書類に追われ、返事してない外国へのメールに追われ、そしてゼミと講義。ゼミや講義は楽しいのだが、山のような雑用に追われるのは本当に鬱陶しい。というわけでそういう雑用をしている時はとても機嫌が悪いし、とにかく早く終わらせたいので一心不乱にノートパソコンと格闘する。そしてそういう時に限ってコンコンとノックをして入ってくる輩が名前を名乗らない。僕の席はドアの逆側を向いているので誰が入ってきたかは分からない。幽霊のように入ってくる輩にますます気分を悪くしていると、前回もそうだったが学科長である。坂牛は本当に愛想悪い奴だと思われているだろうがそうではない。こんな理由なのである。ご容赦。
朝からアルゼンチンで買ってきた本を読む。Gustavo A Brandariz‘OBELISCO Icon de Buenos Aires` My special book Buenos Aires, New York 2011. ブエノス・アイレスの中心軸である世界で一番幅広いと言われるAv. 9 de Julio(7月9日通り)はグリッド都市ブエノスアイレスの1ブロック分あるので約100メートル。その大通りとコリエンテスの交点に1936年に建てられたのがBAのオベリスクですある。
オベリスクはエジプトで最初に作られそして20世紀にいたるまで世界各国で作られてきた。一番大きいのはアメリカワシントンのそれで169メートル。ブエノス・アイレスのものは67メートル。ローマサンピエトロのそれが25メートルとだいぶ低く、パリコンコルドは23メートル。
3年前このオベリスクを見た時に、どうしてこんな何処にでもあるものをこの街のとても重要な場所に作らなけれならなかったのか不思議に思った。そして今回は時間が無くてこの通りにさえ行っていないのだが、この本を読みながらその謎は少しずつ解ける。
西欧の都市には実態としての、つまり目に見える形象としての中心が必要なのである。その際その形象は高くて細いものでないとどうも上手くない。特にBAの場合は道路の真ん中にあるのだから。そうなるとエジプトの昔からあるこの形が選択されるのは自然の成り行き。
ロラン・バルトが東京で著した『表象の帝国』の中で東京には虚の中心があると書いたのは言葉の遊びではない。フランス人にとって実態の無い、目に見えない中心があることが不思議なのであろう。そこにあるのは江戸城址でありエンペラーの住居だがそれはその場所の内容であり視覚化されていない。
実態の前に内容を問うという我々の建築作法と欧米人の作法との差はワークショップでも鮮明になった。彼らは先ず視覚化できる実態を持ってくる。我々はそこでの意味を問う。しかし彼らにとって建築とは先ず実態なのであろう。都市とは先ずそれを規定する形態でありその中心にあるべきオベリスクを作ることなのである。内容を問うことは彼らにとって最初にやるべきことではないのである。
昼にジェクサーで走る。こんな天気が良いのだからアルゼンチンにいた時を思い出して街ウオッギング(ウォッチ+ジョッグ)もいい季節。
四谷から銀座へ。ポーラミュージアムアネックスで岡本光一展を覗き、その裏のギャラリー小柳もついでに立ち寄る。杉本博司の水平線が並んでいた。
岡本光一のオルゴールは傑作。無数のオルゴールのそれぞれから一音だけでるように針がはずされcpuでコントロールされている。
土曜日の晴れた銀座ほこ天で車がいないから静かで空気がいい。ブエノスアイレスより東京が勝るのは空気。
午後理科大建築のOB会(築理会)に出席。特別講演は藤島学長。光触媒の権威。内容も話術も素晴らしい。
ゴールデンウィーク明けの早稲田の演習。今日は学生発表。皆なかなか面白いがもう一歩突っ込みが欲しいところ。三朝庵で昼。ここではいつも親子丼。今日は時間があまりないのであゆみbooksには寄らず事務所へ。コンペの打合せ。さあこれで勝てるだろうか?いい所まで来ている気はするのだが。夕方大学へ。2週分たまった1時間設計の採点。上位陣は盤石。皆線を丁寧に。まだ素人のスケッチに見える。4時半から4年生の卒論ゼミ。分析対象が無ければ研究はできない。やりたいことだけ先行してもだめです。6時から製図。僕と呉君で最初に見て宿題を出してTAがそれをフォローしまた僕らで見る。なるべく一人三回見る。次にやるべきことを明確にしてから帰るようにさせる。これはなかなかいいやり方かもしれない。