オープンハウス
今日はなんとオープンハウスダブルヘッダー。一つ目は坂本先生の最新作のオープンハウス。数年前に町田の美術館で大きな模型が展示されていた100㎡強の住宅。建物の全体の構成はハウスSAを彷彿とさせる螺旋状の連続した空間で地下から始まり最後は屋上で終わる。その繋がり方はSAを凌ぐ軽やかさである。加えていつもながらのスケールの調整は勉強させられる。随所に設備的な工夫がされているのはSA同様である。このあたりは坂本先生の偉いところだと思う。いま関係性論を考えているとき、こうした関係性はどう捉えたらいいのか面白いテーマである。
早々に坂本先生とお別れし、甲府の自作のオープンハウスに遅れて駆けつける。遠くて人が来にくいところだけれど、信大のOBや理科大のOB、事務所の人たちが来てくれた。ご来場ありがとうございます。
ローザス・山口小夜子・ガブリエル・オロスコ
午後池袋芸術劇場で「ローザス」のコンテンポラリーダンスを観る。音楽はスティーブライヒの「ドラミング」が全編使用され、衣装はドリス・ヴァン・ノッテン。硬いミニマルミュージックと優美でセクシーなダンスのコンビネーションは訴求力がある。コラムに詳しく書きました。http://ofda.jp/column/
池袋から大手町経由で清澄白河の東京都現代美術館へ。最近来たくてもつい遠くて来られなかったのだが今日はこのあと茅場町で食事会があるので丁度いいタイミング。山口小夜子展とガブリエル・オロスコ展の両方を見ることができた。ちょっと駆け足だったが双方面白かった。山口小夜子が舞踏をして詩の朗読をしてファションデザインもしていた晩年の姿が報告されていた。山口を最も多く撮った横須賀功光曰く「小夜子を撮るときはこれだなっていうところまで撮るんだけれど、写っているのはそれ以上なんだよね」と言っている。そういうことがどういうことなのかはカメラマンではない僕には実感としては分からないけれど、周囲にいる人を含めて世界を作れてしまう雰囲気を持っているということなのだろうと推測する。そういう人は誰かが言っていた、ある意味知的な人ということなのかもしれない。
風景の共有
京大田路先生より『日本風景史』昭和堂2015をいただいた。400ページを超える大部の書であり、古代から現在まで13人の方による論考が掲載されている。全体を貫くと思われるコンセプトが共感できる。とは言え、そのコンセプトはまえがきを読んだ限りの自分の推測なのだが、それは風景とはそれを先導する社会的に共有されるヴィジョンに基づき人々が獲得していくものであるというものである。つまり風景とは社会的に共有されるという考え方である。田路先生が京大で風景論の知を共有していた中村良夫先生は私が学生の頃は東工大におり、中村先生の考えに私は大きく影響を受けていたのでおそらくこの推測は半分以上正しいと思う。
甲府の児童養護施設のオープンハウス
甲府の児童養護施設のオープンハウスは4月19日12時から16時までです。フライヤーは下記からDLください。
甲府の児童養護施設のオープンハウスフライヤー
実態と意識
数土直紀編『社会意識からみた日本-階層意識の新次元』有斐閣2015を読むとへえーと思いつつさもありなんという事実にぶつかる。階層帰属意識アンケートで上、中の上、中の下、下の上、下の下、わからない、に丸を付けてもらうと中の上、中の下に丸をつける人は時代的に以下のようになる。50.7(1935)、39.4(1945)、41.9(1955)、54.7(1965),76.4(1975),71.4(1985),72.3(1995),55.2(2005),71.5(2015)。戦後、50年代に国が中流を目指して進み、60年代高度経済成長、70年代中への帰属意識は7割まで上がる。しかし80年代は不平等感が始めて意識され始め、90年代バブル崩壊するにも関わらず中帰属意識はむしろ上昇。リーマンショック前の2005年に急激に下降するが2015年にはもとに戻っている。
格差社会と一億総中流の高度経済成長時代の中帰属意識の割合が変わらいというのはなぜなのか?その理由の一つは高度経済成長時代は国が中帰属意識を煽って、国民全員がその気になっていたというものである。実態は経済その他の状況から見てもっと差があった。では今はどうしてかというと二つの仮説があり、一つは収入が異なっても皆が似た様なライフスタイルで生きているからおなじ帰属意識(中)を持つ、もう一つは収入が高くても社会的地位が低いとか、収入が低くても社会的地位が高いなどの地位の非一貫性が中を選ばせるから。総じて、高度経済成長期は帰属意識ほど、中が多かったわけではなく、格差社会の現在も帰属意識ほど中が多いわけではないということである。では実態としては昔と今は同じなの?
なぜか坂本建築が登場
午前中とある出版会議。昨日もグラフィックス本の編集会議を行い、編集者の分析力が本の質をぐいぐい高めて行くのを感じた。今日も編集者の的確なコメントとアイデアをもとにディスカッションしていく中で、自分の頭の中が整理され、新たなアイデアが出てきた。稲葉なおとが本は編集者との合作だと言っていたがそのとおりだと痛感する。
夕方神楽で二年生製図のオリエンテーション。担当非常勤は今村水紀さん、上條美枝さん、新堀学さん、鉢屋景二さん、長谷川祥久さん、水戸淳さん。皆さん第一線で活躍されている建築家である。それぞれの先生には第一課題の「光の部屋」の趣旨に即して自らの経験から「光」に関連するスライドを紹介してもらった。新堀さんは坂本一成さんの代田の町家を紹介していた(ちょっとびっくり)。それは光というよりか開口部の説明に坂本建築を例示していた。なるほど開口ということなら坂本建築にはこだわりがある。
夜は最終で甲府へ。今晩は甲府に泊まり明日朝一でカメラマンと会い、撮影指示をする予定。
実感のできることから始めよう
朝グラフィック本の編集会議。平瀬さんの冴えたグラフィック分析が分かりやすい。だいぶ話が見えてきた。午後一で東工大に行って三年生の製図のエスキス。今日は初回なので全員敷地を選んで発表してもらった。去年まではいつも発表者が6~7人だったので呑気にやっていたら時間配分を間違った。最後の方は超駆け足になり申し訳なかった。5時半に東工大を出て南北線で飯田橋にもどり、こちらは4年生の製図ディプロマのオリエンテーションン。去年までは、エンジニア、コンテクスト、プログラムのどこかからスタートせよとしていたのだけれど今年はキーワードを羅列して、どこに食いついてもいいとした。そして実感のできる具体的な事象から始めること、大きな概念から始めないことを念頭に置き、ラウンドテーブルで皆が意見すると言う方式に変えてみた。さてこの方式去年よりいい結果を残せますように。