去年の初めに「無縁社会~‘‘無縁死‘‘3万2千人の衝撃~」というNHKスペシャルがあったそうだ。結構な反響があったようで、本になったので読んでみた。NHK取材班編『無縁社会』文藝春秋2010。無縁社会とは文字通り、地縁、血縁、社縁などの「縁」がなくなった社会てある。そこで人々は最終的には行旅死亡人(こうりょうしぼうにん)となって官報にのって無縁仏専用墓地に葬られるという寂しい世界がルポされている。
もちろんこうした問題は孤独死に代表されるような老人に限ったことではない。未婚率が上がる現在、30代40代にその予備軍が確実に生産されているという。本誌に掲載されていた生涯未婚率の推移グラフを見て目が点になった。2010年現在生涯未婚率は男性19%女性10%である。これが20年後の2030年には男は30%、約3人に一人、女は23%4人に一人が生涯未婚なのだそうだ。もちろん独身でいることは個人の生き方の選択でありそれ自体が問題視されるべきではないが、未婚でいる理由がその人の意志でないとるするならば考えものだ。
本誌によれば未婚男性が増加する理由は4つあるという。
① コンビニなどの増加で一人で住まうことの不便さが減少した。
② 非正規労働が増え結婚する経済力がつかなくなった。
③ 結婚年齢の社会規範がなくなった
④ 女性の経済力が増加し女性に結婚する必然がなくなった。
これらの理由を見ると。個人の意志とはうらはらにという感じである。そして職が不安定ということは明らかに政治の問題である。となれば未婚率の上昇は単に個人の意識の変化として見過ごしていいことではない。
さらにもう一言加えればこれら4つの理由のうち二つは「夫パラサイト妻という旧態依然とした社会状況を前提とした理由である。そんな社会の枠組みを先ずさっさと取り換えなければいけないのだろうと思う。
縁で縛られる社会は、それはそれで息苦しいけれど、無縁は無縁で寒々しい。いい加減な繋がりというのが一番いい、ルーズ縁である。こんな無縁状態の危機感が一昨日に取り上げた『世代間連帯』を生んでもいる。
大学仕事始め。朝一で大学へ。教室会議を終えて午後は赤を入れた4年の梗概を渡す。4年の梗概に毎年見られる悲しい事実。
① 自分の意見と人の意見がごちゃごちゃ(小学校の作文で教えることだと思うが)
② ろくすっぽ調べていないのに断定する(中学生の社会科のレポートで注意される内容)
③ 自分だけ分かった気になっている(これも中学生くらいで注意されることだな)
書かれている内容と目指す志は大学生だが文章のレベルは小学生である。まあ今年に始まったことではないし、この大学だけの問題だとも思わないけれど。
夕方事務所に戻り先日届いた本を開く。平瀬君に教えてもらったETHの教科書である。タイトルはConstructing Architecture materials processes structures a handbook
出版社はBirkhauser である。
アマゾンで注文した時はまあ新建築くらいのヴォリュームと思っていたのだが届いたら電話帳である。Hand bookなのだからまあそいうものかもしれないのだが、内容は単なる事例集ではない。タイトルが示す通り建築をいかにconstructするかが丁寧に記されている。まずは材料。組石、コンクリート、木、鉄、断熱材、ガラス。次に部位ごとの説明。基礎、ファサード、開口、床、屋根、階段。次に構造。そしてやっと建物事例が出てくる。それで終わると思いきや最後にその図面の描き方がまた部位ごとに説明される。
これは教科書としてはパーフェクトである。こんな教科書を使ってみたいものである。でもこれを日本の大学のどの時間に誰が教えるべきなのだろうか?そもそもこんな教材がないということはおいておいて、日本では学部時代はかなり総合的な教育をさせている。だからもうこれ以上カリキュラムに何か新しいことを入れ込む余地はないのである。先ずはそこを変えたいところである。やはりどこかの大学のように建築学部ができれば少しは変わるのかもしれない。しかしそれは何時のことやら。隣の芝生を羨ましがっても仕方ない。そうなると残るは院の教育をそれぞれ専門化させることが考えられる。しかるにその場合講義数だけが教員に比例せず増えていくことになり教えられる先生がいなくなる。恵まれた国立大学の余裕のある先生にしかできない芸当である。やれやれ、、、。