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Sep 2017

20年の停滞

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by 卓 坂牛

大澤聡が『1990年代論』河出ブックス2017の最後で宮台真司にインタビューして最初に学生より20くらい年上の自分が学生と話してもコンテンツのズレがないという。宮台はそれにたいして「20年
の停滞」と呼び90年代から時代は変わっていないという。その理由は文化が局所局所で蛸壺化して全体を参照できなくなっているからだという。この話は建築でもうすうす感じるところである。社会全体からすると建築やっている人々はよほど全体を広く見渡す視線を持っていると思うものの、社会が動かない90年代後半以降、停滞感は強い。そして停滞することに慣れて行き新たな獲得とか挑戦とかへ走ることがむしろダサく頓馬に見えてくる傾向がある。社会が求めるものをそのまま正確に打ち返すことがスマートに見えていたりするのである。でもそんな日常はもう考え直してもいい。とぼくは思っている。

搬入

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by 卓 坂牛

今日がSDレビューの搬入だったことをすっかり忘れていた。ゼミを朝9時からに切り替えて、午後搬入。学生にもたくさん手伝ってもらってヒルサイドに模型と図面を持っていく。昔に比べて広い会場にたくさんのものが置けるのはうれしい限りである。巻子のような図面の磁石止めもなかなかうまくいった。模型はもうワンサイズ大きくてもよかったかもしれないが、まあ思ったようなプレゼンではなかろうか。手伝ってくれた学生たちには心より感謝。

スポンジ叩き

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by 卓 坂牛

独立して最初に設計した建物はRC造。なんと日建時代にやったことがなかった。かたちの納め方は難しくなかったが、塗装で悩む。撥水剤は長持ちしないし、フッ素クリアとか塗ると濡れ色になる。そこでまず、白をスポンジで叩いて塗ってからアクリルシリコンクリアをかけた。その風合いが好きでその後打ち放しの上にはスポンジでEPを叩いて塗ることが多い。模型も同じように仕上げるとそれなりに見える。

ロースのフェミニン攻撃

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by 卓 坂牛

ウィグリー翻訳。本日の感想。今日の節題はDressing down feminineフェミニンを批難するである。批難する主語は、アドルフ•ロース。ロースは装飾を否定し、当時ファッションデザインをする建築家が横行していたのも軽蔑した。その根底に流れるフェミニンを批難したロースはしかし不思議である。というのもゼンパから引き継ぐ建築におけれ被覆の原理はファッションと通ずるし、ロースのインテリアは明らかに被覆の原理を想起させる装飾性に満ちているからだ。ロースは分かっていたはずである。言っていることとやっていることのズレを。ロココの代表的建築家ボフランは著者『建築書』でロココ批判をしたそうで、こういうことは時代の流れを感じる自分と本能によって駆動する自分との間のギャップによって生まれるのであろう。

稲葉いい仕事しているね

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by 卓 坂牛

友人稲葉なおとが文藝春秋10月号に巻頭12ページオールカラーで東京百年建築という特集を発表した。こんな企画はめったに見たことがないかなり豪華である。稲葉氏は文章も写真も自ら仕上げる稀有な才能である。取り上げられている建物は、表慶館(片山東熊)1908年、近代美術館工芸館(田村鎮)1910年、求道会館(武田五一)1915年、清泉女子大学本館(ジョサイア・コンドル)1917年、晩香廬(田辺淳吉)1917年、日本工業倶楽部会館(横河民輔ほか)1920年。100年もつ建物はおそらく200年はもつだろうな。よく「耐震が」とか「劣化」がとか言うけれど、持たせる気があれば建物はもつということだ。

四谷コーポラス

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by 卓 坂牛

1956年に竣工した日本最初の民間分譲マンション四谷コーポラスが建て替えられるということで見学会があると栢木さんが教えてくれたので行ってきた。全室メゾネット80平米。ローンが無い時代に分割払いを採用。分譲価格は230万。現在の価格に直すと4500万くらいだそうでかなり安い。メゾネットブランはかなりよくできている。

社会からズレたところから、次の時代の表現は目を吹く

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by 卓 坂牛

藤森さんが言っていた(『磯崎新と藤森照信のモダニズム建築談義』p230)戦後の建築を社会に開き開放系をつくった人たちがいてそのあと自閉する連中が登場する。それは磯崎、原、それに安藤、伊東が続く。彼らは都市を拒絶しちゃう。藤森はこういう閉じた人たちが次の時代をつくったし、林のように社会が建築を作るという態度は社会に開いた人たちに重なるけれど、次の時代の表現はそこからは出てこない。さらに追い討ちをかけるようにこういう。「組織事務所とゼネコン設計部は、建築を社会の要請に従って実現するのが仕事ですが、それでは建築の進歩はない。社会からズレたところから、次の時代の表現は目を吹くからです」

キーワード

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by 卓 坂牛

学会の建築論・建築意匠小委員会で『建築論の問題群』をあぶりだそうということになった。4年をめどに出版したいと考えている。イメージはフォーティーの言葉と建築のようなキーワード事典である。

そんな事典をを考えている時南さんにゼミで使っているキーワード事典を紹介された。Colin DavisのThinking about Architecture –Introduction to Architectural Theory2011である。南ゼミでは原書を読んでいるそうだが、訳を朽木さんがやっているので訳本を買ってみた邦題は『建築を考えるときに大切な8つのこと』(丸善2015)である。そしてそのキーワード8つが表象、言語、形態、空間、自然、歴史、都市である。フォーティーそっくりである。やはりモダニズムのキーワードは収斂するということだろうか?僕らが目指す21世紀のキーワードは少し違うものになるのだろう

 

 

白井晟一はシュールレアル

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by 卓 坂牛

磯崎新、藤森照信『磯崎新と藤森照信のモダニズム建築談義』六耀社2016は戦前、戦中そして戦後をつなぐ7人の建築家を藤森の調査と磯崎のリアル体験をもとに書かれている。一番面白かった解釈は白井晟一の話。白井は縄文とチューダーとロマネスクの様式を混ぜ合わせ全体のヴォリュームをモダンにまとめたシュールレアリストだというもの。先日読んだダントーの美術史が抽象が作り上げたモダニズムの崩壊を語るものであり、そこから逸れるシュールレアルは茅の外
ていたのを思い出す。シュールは建築でも異端であり、しかしだからこそ白井が面白いのだと思う。アドホックな様式の戯れは出自がわかるのは好きじゃないのだが、無意識に表出するのであれがその人らしさにみえてくる。

横長に見せる

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by 卓 坂牛

SDレビューに出す「運動と風景」の図面をどういう風に見せようか考えていたのだが、運動を表すには長さが欲しいなと思い横に長く図面を並べようと思っていたら先日の国立新美術館での書道展で見た素敵な表具を思い出した。キャンバス地の横長のパネル数枚(5メートルくらいあるだろうか)の上に巻子(かんす)を伸ばせるだけ伸ばしてピンで留めるプレゼンである。このキャンバス地が適度に汚れていて和紙の色とよくフィットしていたのである。そんな見せ方をしようと実験中。図面は和紙に印刷したいと思っていたら和紙のロール紙というものも世の中にはあるということを知って驚いた。