設計士の役割
昔のクライアントが自邸の隣の空き地に建物が建ち始めたと電話をしてきた。いろいろ聞いていみると、建物がかなり近くに建つようである。敷地境界から30センチである。「民法上は50センチ以上ということなので裁判で争う気なら文句は言えるよ」と言うと、知っている人だからそういう争いはしたくないという。更にいろいろ聞いてみると工務店が説明に来たが、前に来た時は図面も見せず、今回着工してやっと図面を見せるのはずるいと言う。「いや工務店は図面を見せる義務はないのでむしろクライアントへの守秘義務上やたら図面なんて見せられるものではないのだよ」と説明する。
建築関係の職能倫理はこう言うとき難しいものがある。僕等は公共性を持って社会的な視点を持たなければならないこともあるが、一方で厳然とオーナーコンサルという部分を持っている。そこではオーナーの利益を損ねるわけにはいかない。まあ建築に限らず発注業務はどの業界でも同様な倫理的矛盾に直面するのだろうが。
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