石本の2点透視
一日がかりでマスタープランを皆で一緒に作っていた。夕刻今日はひとまず終了。夕食をとって研究室で本を読んでいたが疲れたので石本泰博の『桂離宮』新版を眺めていた。桂離宮の高床の水平垂直木軸ラインと漆喰壁のコントラストであまりに有名な写真集である(しかし有名なのは旧版の丹下さんが解説を書いている方だが)。この写真集は26ページから230ページまで数ページの図面を除いて全て写真である。カット数でも150くらいあるだろう。この写真をぺらぺらめくっていて一枚だけ妙に浮いて見える写真があることに気付いた。最初はその理由は妙に沢山見える桐の模様のふすまのせいだと思っていた。10枚くらい見えるこの金の桐模様のふすまが今にも動き出しそうに見えたのである。しかしどうもその理由は金の桐でもなければふすまの数でもない。それはこの写真だけが2点透視で撮影されているからだろうと思えてきた。
200ページに及ぶ写真の中に2点透視の写真は2~3枚しかないのである。1点透視で撮るのは建築写真の常道なのだろうが、石本もちょっとその道を逸れて連続する4室を2点透視で撮影した。その結果見事に動きのある写真が1枚だけ登場したようである。
明日卒論発表会だが僕の部屋の学生が新建築とカーサブルータスの写真比較を行った。それによるとカーサは新建築に比べ被写体を2点透視で撮る傾向が高いのである。そこでは1点透視は数ある視点の中の特異点であり、2点透視の方が「フツウ」の人の視線であると説明する。つまりカーサのほうがフツウの視線ということなのだが、この石本の写真を見ていると必ずしも2点透視だからフツウとも思えない。計算されつくした2点透視の位置と言うのもある。アイソメのような視点がそれかもしれない。シンメトリーな2点透視というのも何かこう不気味な特異点である。
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