大澤真幸の新刊2題
大澤真幸の新刊『』逆説の民主主義』角川新書2008と『不可能性の時代』岩波新書2008を読む。前著ではハーバーマスとデリダが登場する。二人が世界の軸となる哲学者として紹介される。二人の思想はもちろん異なるものの、他者性の尊重というところで共通点があるという。しかし、ハーバーマスは他者を受け入れる時に基本的条件を作る。それはヨーロッパ的であり、デリダのそれは無条件でありアメリカ的だという。つまり前者は、ナイフしか持たない人たちのようなもの。彼等は熊を敷地に入れないように気を使う。ナイフで熊は倒せないから。しかし後者のデリダ的発想はそうした限定をしない。しかしそれは彼等がライフルを持っているからでもある。彼等にとっては熊が出て来たら撃ち殺せばいいのである。だから始めから熊を除外する必要も無いし、除外することは民主的ではないということになる。確かに世界は今こうした基軸で動いているようにも思われる。後者は大澤が『虚構の時代の果て』で披瀝した戦後の時代認識である理想の時代(45年~70年)虚構の時代(70年~95年)という二つの時代に続く時代分析である。しかし正直言うとこの本はよく分からない。どうも具体的な例示と観念的な分析の接続が新書レベルでは言葉足らずになってしまうのか、僕の基礎知識が不足しているのかあまりピンと来ない。
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