胃が痛い
7月5日
9時40分発JAL大分空港行きに乗る。11時10分くらい着陸態勢にはいり降下。厚い雲の中に突入。後少しで着陸という瞬間にエンジンがフルスロットルで機体は急上昇を始める。再び機体は雲の上。しばらく水平飛行を続けたところでアナウンス。「大分空港は急激な天候悪化のため滑走路が確認できず着陸を断念。福岡空港に着陸します」とのこと。大分空港で初めてのクライアントと会うはずだったのに。しかし実は福岡から高速バスんで大分まで100分。最終目的地を考えるとこれでも良かったのかもしれない。高速バスを降りたところに迎えの車がきており、クライアントの保持する会員制のホテルに。ここはレセプション棟にレストランラウンジ等があり、宿泊室は離れになっている。この会員制ホテルの周りに分譲別荘の敷地が数十あり、その中には大手企業の保養所もある。その別荘地の中に、別荘のモデルハウス機能をそなえたゲストハウスを作ろうというものである。
敷地を見ながらいろいろ話を聞いていると、こうしたゲストハウスが必要とするホスピタリティについて遥かに僕より経験が豊富であることが分かる。かつてこうした埋めきれない経験の落差を感ずることが数回あった。先ずは日建入ってまだ若かりし頃のことである。日建のクライアントである企業は担当者が営繕20年というような人ばかりだった。全然経験が違うのであり、こっちの言っていることなどまるで厚みがない。自分の主張などまるで役立たずだった気がする。次はこちらも少し建築的経験が増し、建築の話なら負けないと思えるようになった頃に出あったスポーツウエアメーカーの社長。ここの社長は自らの指導で志賀高原にホテルを作った。このホテルは文化人の溜まり場となっている。僕は先ずこのホテルに泊まらせられた。そしてその後の設計現場においては材料、空間に関してそのオーセンティシティを徹底的に説かれた。今回のクライアントも同じ。京都俵屋に20年間通うというこの方はこの会員制ホテルの拘りを切々とを語ってくれた。このホテルはスーパーゼネコンの設計施工なのだが設計者はさぞ大変だっただろうと想像する。しかし次は自分の番である。
ゲストハウスに寄せるクライアントの要望は「重厚で、斬新で、周囲のスーパーゼネコン設計の建物に負けない」ことである。こんな仕事ができて嬉しいような胃が痛いようなである。
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