伊勢
伊勢神宮は一つではない。内宮と外宮と呼ばれる二つの神宮からできているのである。こんなことを今まで知らなかったのは少々お恥ずかしい。しかし建築史の教科書の最初に出てくる伊勢や出雲ではあるが、東京に住んでいればよほどの理由がなければ行かない。かつて出雲に行ったのも大学の建築史視察の授業だったからである。
伊勢は世の中に生まれたときから、この高床式の現在の姿であったという伊東忠太の説が現在まで変化していないそうだ。そこにはたいした根拠がなかろうと食いついたのが井上章一である。
今日伊勢を見て回ると次の建て替えである式年遷宮の準備が始まっている。現在の敷地の隣地が既に塀で囲われたり、地縄が張られたりしている。既に60回余り建て替えられてきたのである。常識的に考えて1千年以上まったく同じ形を踏襲して建て替えられてきたと考えるのは困難では?そんなこと無理でしょう?と思えてならない。直感的には井上の主張に加担したくなる。加えて、中国伝来の仏教寺院の形が神仏習合で神社建築に導入された場合、どこかでナショナリズムの力が、中国の形を取り除き日本元来のもの(縄文、弥生)を神道の形式として採用したいという欲望も沸きあがろうというものである。なんの根拠もないのだが、深い杜の中を歩きながら日本を巡るストーリーを勝手に捏造する。
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