浮き出ることまとまること
午前中クライアントと打ち合わせ、中国の可能性など話す。事務所に戻り昨日の続きを考える。昨日は環境心理だったが、今日は視覚心理の本(大山正『視覚心理学への招待』サイエンス社2000)を読む。ここでまた面白い概念に遭遇して目から鱗である。それは「見えのまとまり」という概念。似た者同士は一つのまとまりに見えるというごく当たり前のことである。そういう話はどこかの心理学の本で読んだ記憶があるが、忘れていた。つまりⅰ同じものなら近くにあればまとまる。ⅱ距離が同じなら同質なものがまとまる。ⅲ閉じた形を作るとまとまる。ⅳ連続性があるものはまとまる。ⅴ単純で規則的で左右対称な形はまとまる。などなど。今まで建築物と周囲の馴染みは図と地だけが鈎概念だと思っていたのだが、このまとまりの概念の方が遥かに使えそうである。つまりある建築物が周辺環境要素とどの様に郡化するかということをこれらの既知のルールが教えてくれる。例えば、伊東さんの葬祭場のように真っ白い建物は周囲の緑からは図化しやすそうだ(図化がおこる最大要因は図と地の輝度差だそうだ)一方で流れるような曲線の屋根は周囲の山並みの曲線と連続することでその部分は形のまとまりを作るわけである(なんて見たことないから想像上の話だが)。あるいはこの間ブエノスアイレスで見せてもらったロベルトの設計したビルは隣の古いレンガビルをレスペクトしてレンガでできている、一方この街並みにはレンガビルはこの二つしかない。ロベルトのビルの形は少々暴れているので形の図化が起こりそうなのだが、隣の古い歴史的なビルと同質なまとまりを見せている。つまり図として浮き出ようとする建物を周辺環境要素につなぎ止める役割としてこの見えのまとまりは貴重な手法だろうし、こうした図化と郡化の同時現象はある種の緊張感を生み建築にエネルギーを与えているようにも思うわけだ。
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