虚白庵(こはくあん)
白井晟一の自邸虚白庵が取り壊し前に見られるという。ある意味で日本のモダニズム建築期の極北としての地位を獲得したこの建築家が最近になってやっと視野の中にいる。学生時代に親和銀行を見に行ったけれど、当時の教育や時代風潮からすると全く理解できなかった。その後、これも学生時代にオフィスの課題をするのにノアビルを見に行った。エキセントリックな造りであることは理解できてもそれ以上に考えが及ばなかった。ノアを見るならPMTを見ようという学生の方が主流であった。大江戸線新江古田の出口の目の前に雨の中50人くらいの待ち行列。建物見るのに行列ができていたのは初めての経験である。僕の整理券番号は415番。1時から始まって2時半くらいだったから1時間に200人近く来た計算。しかも来ている人は建築関係者だけではないように見える。確かに彼は多趣味な魯山人のような人だったのかもしれない。RC造とはいえRCが見えているところはすべてはつっているので一見石づくりのようでもある。中庭側には瓦の乗った土塀があり和風も顔をのぞかせるが部屋の中は毛足の長い絨毯敷き、壁、天井は本当のクロス。色も多彩。赤い天井もあった。ただでさえ暗い白井空間で、照明が大分外れているので真っ暗である。手探りで彼のディテールを味わうと言う何とも「粋」な建築体験であった。この建物はプランが公表されていないらしい。だから入口で頂いたプランは貴重なものなのだろう。このプランを見ているとそのドライな空間構成に驚く。入口の両側に大きな長方形が二つL字型に配され、その長方形のそれぞれの中に二つ三つの長方形がわりと無造作に置かれている(そう見える)。そして置かれた長方形によってその残余空間が生まれている。そしてその空間の流れのようなものが家具や照明が白井の思い通りに置かれて初めて体感できるのだろうと想像した。それにしてもスケールが間延びしていると思えるくらいゆったりしている。のべ200㎡余りの平屋を都心で見られることは昨今まずない。
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