自立の思想
その昔サントリー学芸賞を受賞した『アフターアメリカ』という本を読んで保守やリベラルを超えたアメリカの姿にちょっと希望を持った記憶がある。その同じ著者の『アメリカン・デモクラシーの逆説』岩波新書2010を読んでみた。あとがきにこんなことが書いてあった。ブッシュ政権で国務長官を務めたコリン・パウエルが2008年の大統領選の最中「オバマはイスラム教徒である」と吹聴する共和党の一部を戒めて次のようなことを言った。オバマはイスラム教徒かと聞かれたら、キリスト教徒というのが正解だけれど、もしイスラム教徒だとして何か問題があるのか?答えは否。アメリカではそんなことが問題であるはずがない。これを読んで日本にこうした決然とした態度をとれる政治家がいるだろうかと考えてしまった。党派性に縛られることなく自立した発想を持てる政治家である。数日前に話題にした吉本隆明の思想はこれに近いものがあるのだが、よく考えてみると今の日本でこういう発言は政治家向きではない。日本にはこういう発言をできる政治家がいないと嘆いても無意味なのかもしれない。なぜなら日本とはこういう発言が効果的に政治を動かせる構造を持たない国だからである。
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