親父の書斎
生まれ育った西武池袋線江古田を歩いてみたくなった。小学校1年まで住んだ場所である。記憶に残る日大芸術学部は建て替えられ街に開かれた最新大学に様変わりしていた。6年間住んでいた団地も建てかえられ住宅供給公社のアパートにはとても見えないぴかぴかのマンションのようになっていた。引っ越し後も通い続けた開進第四小学校に行ってみた。やっと自分の記憶をよみがえらせる風景があった。でもそれは建物ではなく運動場と木々である。そこから10年間通った武蔵野音大へ。ここは建物に記憶が詰まっている。ホールのファサード、ガラス越しに見えるロビー。あそこで恐ろしいレッスンを前に緊張していた自分を思い出す。音大を後にして駅前へ。もうなくなってしまったと思っていた市場と呼ばれるアメ横のような商店街が残っていた。よくここでおつかいの帰りに焼き鳥を食べた気がする。
西武線で大泉学園へ。小学校1年から大学を卒業して日建に入り結婚するまで過ごした実家に行く。よく考えると実家に行ったのは10年ぶりくらいである。2階の親父の書斎に行ってみる。僕ら兄弟の部屋も親父の部屋になってしまったようだ。あれあれ木造の2階にこんな本置いていると家が傾くぞ。一つの部屋は全集ばかり。マルクス、エンゲルス、レーニン。一つの部屋は雑誌と文庫本新書など。わけもわからずこんな本にあこがれた時代があったものだと思いだす。
両親は二人ともまだまだ元気そうでうれしい。親父には立花隆、オフクロには山下洋輔の新刊を西武リブロで買ってきた。本がうれしいくらいだから未だ頭もぼけてはいないようだ。
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