制度の中で、制度を利用し、そして制度が想定しないものを作る
●Tさんと住友館の仕事を始めた時のスケッチブックの1ページめ
共同設計者Tさんと新宿で待ち合わせ湘南新宿ライナーに乗る。Tさんが言う
T:坂牛今日は3つの提案がある
S:はい何ですか?
T:一つ:共同でやっていく時の指針(ミッションステートメント)を決めたい。それは「制度の中で、制度を利用し、そして制度が想定しないものを作る」
二つ:規定の設計料はお前の事務所で契約してもらえ、おれは成功報酬でクライアントが気に入ればもらう
三つ:この建物のタイトルは女子棟をアリス、男子棟をテレス、全体でアリスとテレスとしたい。
思わず笑いそうになったが、これが彼の持ち味。
T:行けてるんじゃないですか・
クライアントのトップにこの3つの話しを最初にバーンとぶつけた。クライアントはびっくりしたり、困ったり、笑ったり。そして最終的にはすべてお任せしたいで終わった。
Tさんは前も書いたが日建時代の僕の師匠1である。1987年林昌二は自分直属の日建ゲリラ部隊を作り「東京スタジオ」と命名してマンションの一階に部屋を借りて意匠設計部員として3人を起用した。その一人がTさんであり僕だったのである。そしてTさんの下で僕は横浜博覧会住友館を設計してSDレビューに入れていただいた。あの時もTさんがクライアントにバーンと強いコンセプトをぶつけてくれたことを思い出す。僕が思う存分にやれる環境を最初に作ってくれた。今回も全く同じである。頼れる親分である。最近はこんな粋なことを言える上司は少ないだろうなあと思う。むかしはこんな人が日建にもいたのである。
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