花田佳明さんの松村論にうなずく
花田佳明さんにお送りいただいた『建築家・松村正恒ともう一つのモダニズム』鹿島出版会2011を一気に読んでみた。花田さんの博士論文であり渾身の一冊。600ページを超える大部の書。分厚い装丁に怖気づき、いただいてから一カ月くらい放置していたのだが、予定されていた打ち合わせが震災の影響で中止となったのでここぞとばかりに読んでみた。
勉強不足も甚だしいがドコモモの建築家程度の知識しかなかったわけなので目から鱗。こんな建築家がいたのだと言うことに驚くとともに、本のタイトルであるもう一つのモダニズムと言う言葉がまさにぴったりと当てはまる建築家であることを知る。
ドコモモで有名な日土小学校も素晴らしいのだが、学校建築、病院建築の見ごたえある建物が沢山あることに目を見張る。松村建築の醍醐味はもちろん土浦事務所で鍛えたモダニズム(インターナショナルスタイル)の繊細な幾何学にあるとはいえ花田が言うようにそれを遠ざけるようなアンビバレンスにある。花田はそれを「抽象化の拒否」と呼んでいる。そのアンビバレンスに「もう一つのモダニズム」が見え隠れしている。本物を見ていないので正確なことは分からないけれど、そのアンビバレンスを作り上げるためにはかなり高度な技術力があっただろうことは想像に難くない。
こんな本を読むと世界にまだまだこういう「もう一つのモダニズム」を実践した建築家がいたのではないか?と思わせる。また逆に言うと現代にはもう一つものモダニズムを実践している建築家が大勢いることも了解される。モダニズムの何かを拒否したモダニストである。思い浮かぶだけでも両手に余る。
歴史を掘りおこしながらそんな現代への視座を与えてくれる本である。
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