つるつるな関係
栃木の打ち合わせの行き帰りで長島有里枝『背中の記憶』講談社2009を読む。武蔵美在学中に家族のヌード写真で荒木に認められパルコ賞受賞でデビュー。カリフォルニアに留学後スイスのアーティストインレジデンス中に撮った写真を『swiss』という写真集にまとめ個展も開いたのが去年である。
この本もテーマは家族。うらやましいくらいに素敵な家族の中で育ったのだなあというのが最初の印象。ここに書かれていることが正確かどうかは著者自身言うように定かではない。記憶の中に忍び込んだ長島が無意識にねつ造しているかもしれない。でもそれは既にその人の歴史として血肉化しているのである。ディテールの描写は実にきめ細やかであり、その一つ一つが感情の機微を過不足なく表している。この表現力には嫉妬さえ覚える。この人は写真を撮りながらファインダーの中の光景を無意識のうちにことばに置き換えているのかもしれない。
彼女の観察力、そしてそこから抱く細やかな感情の揺れ動きを見ていると自らの粗雑な人を見る目にあきれる。そして50年間に接した人(特に家族)との関係がつるつるの皿のように無味乾燥なものに見えてくる。人生大事にしないと。
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