博士に進む理由?
高学歴ワーキングプア問題は様々語られている。理科大も博士後期課程を充実させるという学長方針が上から回って来た。こんな時期に果たしてそれは正解か?少々疑問もあり水月昭道『高学歴ワーキングプア―「フリーター生産工場」としての大学院』光文社新書2007を斜め読み。
何故この少子高齢化時代に学生数は減らないのか?いやむしろ増加しているのは何故か?それは学部生が減ろうとも大学院生が増えているから。平成3年の「大学院設置基準の改正」に端を発し、以来大学院生が大量に作り上げられてきた。目的はもちろん「日本の研究力の増強であり職業人の能力増大」である。
文科省にも大義はある。しかし著者は次のようにまとめる「大学院重点化というのは、文科省と東大法学部が知恵を出し合って練りに練った、成長後退期においてなおパイを失わんと執念を燃やす‘‘既得権維持‘‘のための秘策だった」要は子供が減って教育を受ける者が減れば文科省の予算も権力もなくなる。それを回避するには教育されるものを増やすしかないということだったというわけだ。
理由はともあれ、先生の甘い言葉に乗って博士後期課程に進んでしまった人にはもはや普通の就職はあり得ない。彼らのまっとうな就職先は研究職である。そしてなんとそこでの失業率はほぼ5割である。新卒の失業率の約10倍。そもそもそんな難関であることを彼らは知らない。よしんば知っていたとして博士をとって研究職に就くことはそれほど価値あることなのかよく考えるべきである。加えて、そんなシリアスな現状を知らせずしてドクターを増やせなどと軽々しく言うべきではないだろう(もちろんそう進むことがふさわしい人はそれでいいのだが)。
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