いろいろな人がつながりをもって暮らせる町
平山洋介『都市の条件―住まい、人生、社会持続』NTT出版2011は鈴木謙介氏が企画した「真横から見る現代」というシリーズの一冊。日本の家の住まい方を公がどのように作り上げてそれがどのように崩れているかを緻密に検証した本である。
戦後の日本では成人したら就職して結婚したら家を出て最初は借家住まいをしてお金を貯め、戸建を購入し定年までローンを払い続けるというライフコースが作られた。我々の親の世代まではそうするのが普通だった。そして我々の世代では、結婚して家を出るまでは似ているが、しばらく借家住まいしても貯金では家を建てられない人間も現れ始めている。そうすると出戻るわけである。すなわち親と二世帯住宅を作ってコストを折半する。これはある種のパラサイトと言えなくもない。パラサイトシングルという言葉が一時期はやったが、これはパラサイトファイミリ―である。
そしてこれからの若い世代の多くはもはや20世紀のようなライフコースは歩むことはできない、パラサイトする親の持ち家も無い子供たちも増えるのである。一生借家という人も増えるはず。日本は持ち家を推奨するデュアリズムの国なのだが借家を含めて多様な住まい方を用意するユニタリズムの国を見習えと言うのが著者の意見。
例えば現在の日本では持ち家を準備させるための公の借家は殆どが家族向きである。しかしそれだと未婚、離婚、既婚、を問わず単身(その中には離職した高齢単身もいる)の受け入れ先は無いのである。もっと新しい生き方や状況に寛容であれと僕も思う。
そんな本を読んでいたからだろうか、午後某市に行って、「家づくりガイドライン」の打合せを行い少々違和感を覚えた。このガイドライン案は前も見ていたものではあるが「家づくりの3本柱」として1)家族のつながり、2)地域とのつながり、3)街とのつながりを掲げている。そしてその概念をブレークダウンしながら踏み込んだ形態規制をかけている。その斬新さは買うのだが、少々住み方の個性を制限し過ぎ。加えて家づくりの基本に家族があるというのもちょっと窮屈である。単身者や友人同士などというこれから増えるであろう(増えざるを得ないであろう)居住形態が排除されている。そこで「家族のつながり」は「人のつながり」へ変えようとT先生の提案あり。加えてガイドラインと言う言葉が良くない。もっと役所が応援しますというスタンスが欲しい。そこで出たのがパートナーシップ。なかなかいいではないか。TPP(trans pacific partnership)ならぬ、YBP(Yashio building partnership)である。
いろいろな人がつながりをもって暮らせる町。そんな町ができればきっと新しく、楽しい、場所ができるはずである。
先生の研究室の前の部屋で学んでいる団塊の世代です。先生の親の世代の典型です。夫婦二人になりそれぞれ勝手にやっています。そして買ってしまった家に縛られる窮屈さに今は借家暮らしをしています。私が卒業したら次はどこに住もうかと思案しています。先生の意見に賛成「家族のつながり」より「人のつながり」そんな街にはいろいろな世代がいていいと思います。
コメントありがとうございます。僕の前の部屋に人生の先輩がいらっしゃるとは知りませんでした。「買った家に縛られるのが嫌で借家暮らし」とはよく分かります。私ももうすぐそうしようと思っているところです。娘は一生単身でいたいというし、配偶者は外国に住むというし、私はどうしようかなと考えているところです。