「プロメテウスの罠」は清々しい新聞らしい連載
朝日新聞特別報道部『プロメテウスの罠―明かされなかった福島原発事故の真実』学研パブリッシング2012を読む。朝日紙上で去年10月から行われている話題の連載の初期の書籍化である。最近気づいて読み始めたがちょうどこのころの部分を読み逃していた。
3.11後結構多くの関連書籍を読んだが、事実に肉薄したものは地震直後には存在しなかった。だからこの本は頗る新鮮である。そしてこの事実から次の3つのことに驚く。
①日本の情報隠蔽体質
これは枝野が悪いとか誰が悪いとかい言う問題ではない。そうではなく日本の政治、行政にこびりついているものである。中国で新幹線が脱線した時に中国が事実を隠ぺいしたと日本は批判したが、日本とて世界から見たら同じに映っているのだと思う。
②無効だったSPEEDI
放射能の汚染範囲を僕らは何キロ圏と言って憚らないが、実は汚染範囲は同心円状に広がるわけではない(そんなことちょっと考えれば当たり前である)。それを予測するシステムSPEEDIの情報が米軍には地震直後から流されていたにもかかわらず、日本政府には流されていなかった。
③管現地入りの勇気
管首相が3.12に原発へ飛んだことへスタンドプレーだとか本部を空けたとか言われて批判が多いが、果たしてそうか?あの時東電は福島第一を完全放棄するつもりだった。それを避けるために管は東電に乗りこみ命がけでやろうと鼓舞し、「60歳以上が現地に行けばいい」と捨て身で現地へ飛んだ。この事実の流れを読んでいると管が現地へ行ったことはごく自然だし勇気ある行動だったと僕には思える。
本書最後の1ページには背筋も凍る内閣危機管理監伊藤哲郎と東電担当者との15日午前3時の会話が載っている。
伊藤「第一原発から退避するというが、そんなことをしたら1号機から4号機はどうなるのか」
東電「放棄せざるを得ません」
伊藤「5号機と6号機は?」
東電「同じです。いずれコントロールできなくなりますから」
伊藤「第二原発はどうか」
東電「そちらもいずれ撤退ということになります」
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