今年度はこんな本を読みます
明日から研究室の輪読ゼミをする。今年度の本は以下の通り。今年はPDで天内君が来たので彼に本の読み方を指導してもらう。
このリストはそれなりにけっこう考え抜いたもの。毎年今年はじっくりと一冊の本を丁寧に読もうかなと考えるがその考えは途中で消える。というのは昨今の学生にはあまりにも知識の全体マップが無いと感じるから。こんな本は昔なら教養課程で読み終えていたもの。もっと昔なら高校時代に読破していたような本なのだろうが現代では3年生までに見たこともないと言う状態だし、下手すれば卒業まで(というか一生)読まない。もちろん大学院に行ったって読まない。そう思うと狭く深くではなく、浅くてもいいからとにかく知の星座の全体像が見渡せないとだめだろうと思うに至る。
坂牛研 24年度 輪読本 リスト
前期
1,岡田 暁生 音楽の聴き方―聴く型と趣味を語る言葉 中公新書2009
肩慣らし、音楽鑑賞術は建築鑑賞術に通ずる
2,竹田 青嗣、 西 研 はじめての哲学史 有斐閣アルマ1998
先ずは哲学の教科書で通史を頭に入れよう。建築の作り方に限らず社会は哲学の流れと平行に動いている
3,木田元 ハイデガーの思想 岩波新書 1993
ハイデガーを理解しないとこの後に読むシュルツは理解できません
4,和田伸一郎 存在論的メディア論―ハイデガーとヴィリリオ 新曜社2004
僕が2004年に最も影響を受けた本。僕の建築論を支えてくれた書
5,ノベルグ・シュルツ 実存・空間・建築 SD選書 1973
モダニズム建築はハイデガーによって大きく変わる。ハイデガーを建築に翻訳したのがこの本
6,レム・コールハース 錯乱のニューヨーク ちくま学芸文庫 1999
言わずと知れたコールハースの主著。大学時代に原書を読んで歯が断たなかった。
7,佐々木健一 美学への招待 中公新書 2004
院生はすでに美学史を学んだのでいまさら入門書と思わず美学を思いだそう。
8,桑島秀樹 崇高の美学 講談社2008
美的概念の中で最も建築に影響を及ぼしてきたものの一つが崇高
9,大澤真幸 虚構の時代の果て―オウムと世界最終戦争 ちくま新書 1996
戦後日本社会の変化を身につけよう。社会の変化が建築を変えてきた
10,福嶋 亮大 神話が考える 青土社2010
一昨年最も面白かった本の一つ。君達の同時代のことだから賛成反対議論して欲しい
11,北田大暁・東浩紀 東京から考える NHK出版2006
東京の大学だから敢えて再度東京を考えてみたい
12,宇野常寛 リトルピープルの時代 幻冬舎2009
村上春樹をもとに現代のわれわれ(というか若者)の感覚をうつしだしている。異論反論あるだろうか?
後期
13,広井良典 コミュニティを問いなおす ちくま新書 2009
後期の肩慣らし。去年のトークインで篠原聡子さんがあげた課題図書。世の中変りつつある
14,廣野 由美子 批評理論入門 中公新書 2005
この後に現象学を学ぶが一体哲学理論派何の役に立つのか?それはものの見方即ち批評力に影響する
15,木田元 現象学 岩波新書 1970
前期はハイデガーを学んだ。後期はハイデガーに続く、現象学を学ぼう。この考えも建築に大きな影響を与えた
16,ロランバルト 明るい部屋 みすず書房1994
バルトの写真論。バルトは記号論の大家でありやはり建築に大きな影響を与えた
17,ゲルノート・ベーメ 雰囲気の美学 晃洋書房 2006
後期の美学本はこれ一冊。信大では皆これ読んで雰囲気の建築が大流行した。
18,井上章一 作られた桂離宮神話 講談社1996
ちょっと一息本。でも滅茶苦茶おもろい。
19,クロード・パラン 斜めに伸びる建築 青土社 2008
パランはヌーベルの先生。ヌーベルも昔は斜めにかぶれていた。
20,アンソニー・ヴィドラ― 不気味な建築 鹿島出版会1998
さて再度ハイデガーを思い出し。建築の不気味性を考える。ヴィドラ―は21世紀最高の建築批評家の1人。
21,鈴木謙介 カーニヴァル化する社会 講談社現代新書 2009
後期社会学本はこれ一冊。現状分析の本は常に批判的に読んでみよう。
22,中沢新一 アースダイバー 講談社 2005
東京を敷地に卒研やるには必読本
23,小林信治他 視覚と近代 名古屋大学出版会1999
視覚とは飼いならされたものだと言うことを先ず理解して欲しい
24,エルヴィン・パノフスキー 象徴形式としての遠近法 ちくま学芸文庫2009
飼いならされた眼は特にルネサンスの時代に透視図法によって顕著になる
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