ヒューマニズムの建築って知っている?
浜口隆一『再刊 ヒューマニズムの建築』建築ジャーナル(1947)1995をやっと読み終えた。日本の近代建築思想の確立を稲垣栄三『日本の近代建築』は「分離派」とする。爾来その考えは定説となっているようにみえる。しかし分離派宣言は思想と言えるだろうか?あれは運動ではあれども思想とは言い難い。と個人的には思っている。過去から分離しようと言う勢いではあるが創作の理論には至っていない。分離派からこの『ヒューマニズムの建築』が出版された1947年の間にどのような著書があるのかは調べ上げたわけではないから分からないが、この書は次なる理論的節目であり、日本の近代建築を位置づけた書ということになっている。しかし、その理屈付けは予想外にユニーク。そもそもこの「ヒューマニズム」という用語の使い方に驚く。それは近代市民革命により生まれ出た社会の主流たる市民(人民)を意味しているのだから。
著者の近代建築の定義はこの意味でのヒューマニズム+機能主義に裏付けられた建築なのである。そしてこの機能主義とは人のための(ここで再度人が登場する)機能と言う説明がまた少しユニークである。
近代建築をここまで人に引き付けて説明した言説を僕は知らないのだが、果たしてその後日本の近代建築はそうは進まなかったように思う。人のためと言うことで具体的には戦後最小限住宅の推進を促しているがそれは限られた設計者の美しい作品に結晶したものの、人民の建築にまで到達したとは言えないであろう。
しかし、この書は終戦直後の高い志、階級意識、を醸しそれでいて極めて理性的な書きっぷりであり確かに日本近代建築推進の最初の理論書と言えるものである。
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