多木浩二とグルスキー
明け方自転車を飛ばし、社会に出てからの最初の仕事「日比谷ダイビル」を見に行った。懐かしいというか、自分がこんなことしていた時代もあったのだと改めて思う。帰宅後午前中、ダニエル・J・ソローヴ(Solove, J.D.)『プライバシ―の新理論』みすず書房(2008)2013を読む。プライバシーという概念はアプリオリに正しく価値あることだなんて思っている一方でやたら最近の個人情報保護というものも過敏すぎやしないかと疑問をもっていた。そこにこういう本があったので読んでみた。プライバシーを専門に扱い、プライバシーとそれに対立する公共の価値をプラグマティックに評価しようという研究家がいることを知る。目から鱗である。世の中には知らないことが山とある。
午後恵比寿の写真博物館に行き「日本写真の1968」を見る。1968は日本写真史ではあの「provoke」が出版された年である。展覧会にはprovoke1,2,3の写真からその後の荒木など時代を変えた貴重な写真が並んでいる。せっかく来たので4階の図書室でprovoke復刻版を読み、一部コピーした。読むとっ言っても多木のところだけで、それは第一巻にしかない。大学闘争のまったっだ中に出されたこの雑誌がいくら政治性を標榜しないと言っても誌面からは熱い血潮が噴き出そうである。
恵比寿から六本木に行って、昨日行けなかった「アンドレアス・グルスキー展」を見る。その昔竹橋かどこかでドイツの写真展というのがあって見たことがあったがその時の印象からあまり進化していない気がした。彼の写真の強度はその大きな画面の中に含まれる途方もない量の情報とその解像度の高さにある。それが我々の眼の能力を楽々と超えていくのである。この敗北感にわれわれはマゾ的な快感を味わうのだが、敗北感も二度目になると「まあね」という諦めに代わる。さっき見た86年の熱い血潮のほうが心を打つような気がする。
青山ブックセンターにアルゼンチン本が展示されていると聞いて立ち寄る。すてきな音楽関係の本である。本屋の前のサンクンガーデンでぺらぺらめくりながらこのブログを打っている。これから夜の講義までまだ時間があるので銀座のエルメスギャラリーに立ち寄ろう。
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