多孔質化と呼ばれるボイガスのアーバンデザイン手法
●ミラーレスのサンタカタリーナ市場
再来週バルセロナでエンリクに会い日本で行うWSの話をするにあたり、バルセロナの都市計画とまちづくりを少々勉強してみた。教科書は阿部大輔『バルセロナ旧市街の再生戦略』学芸出版2009。19世紀末に旧市街からはみ出るバルセロナの町が113メートルグリッドで拡張されたのはよく知られたセルダの都市計画である。20世紀後半にそれを受け継ぎながら独裁政権(1940~75)後に大きなマスタープランを作るのではなく「ミクロの都市計画」を行ったのがオリオル・ボイガスである(年初のワークショップに来る予定だったが体調不良で来られなかった)。「ミクロの都市計画」とは100近い拠点プロジェクトを地域の個性を失わないようにサイト・スペシフィックに行う計画である。その中にスラム化した旧市街(面積は千代田区の半分人口は千代田区の2倍)の再生計画も含まれていた。その後その計画はより具体化し、密集し、老朽化し、麻薬、売春の温床と化した旧市街地が再生した。そのプロジェクトはスペイン語ではesponjamientoと呼ばれた。そのまま訳すと「スポンジ化」となるが一般的に「多孔質化」と呼ばれている。おおよその意味は部分的に建物を排除したり、リノベをして公共施設や公共空間を挿入していくというものである。つまり既存建築に公共の孔を多く穿っていくということである。ミラーレスのサンタカテリーナ市場やマイヤーのバルセロナ現代美術館やアルベルト・ビアプラナの現代文化センターなどはそうやって埋め込まれた多孔質化の産物である。この話を聞くと今年の年初に行ったブエノスアイレスのヴィシャ(スラム)の再生ワークショップを思い出す。ブエノスアイレスの建築家たちはおそらくボイガスの手法に多くのことを学んでいたのであろう。ワークショップ中はスラムという特別な場所の特別な話だと思っていたが、バルセロナ旧市街のような今では観光中心となっている場所がそうした手法で再生したのだと聞くと、日本でもできるという気になる。荒木町とか神楽坂とか日本の路地空間は多孔質化で再生しなければいけない場所なのだということを再確認する。大きな用途地域の無思慮な色塗りだけで都市計画が終わるわけではない。「ミクロの都市計画」が必要なのである。
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