何者
早稲田大学の現役学生小説家朝井リョウという名前をどこかで知って一冊読んでみた。『何者』というタイトルの直木賞受賞作、仲良し5人の就活物語である。最初のうちはお互いが協力したり、励まし合ったりしているのだが、終盤お互いの欠点を露骨に非難し合う結末となる。その批難のかなりの部分はツィッターで呟いていることへ向けられる。主人公はツィッターに二つのアカウントを持つ。周りからは本人だとは気づかれないと思っていた「NANIMONO」というアカウントがメルアドからバレてしまい、そこに好きに書いていたことが最後に徹底的に非難される。
「あんたはさ、自分のこと観察者だと思ってんだよ。そうしてればいつか、今の自分じゃない何かになれるって思ってんでしょ?」「あんたは、いつか誰かに生まれ変われると思ってる」「いい加減気づこうよ。私たちは何者かになんてなれない」
僕の身の回りでもツィッターで傷つく人は少なくない。SNSが普及すればするほど、SNSワールドの言葉に敏感になるのは当然である。僕らの世代が大して気にしないことでも今時の大学生はとてもデリケートである。彼らにとって現実の世界と、SNSの世界は併存しており、彼らはそのどちらの世界の中でも生きていかなければならない。そういう生き方は恐らくそう簡単に消えることもない。
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