芸者遊び
紀伊国屋創設者の田辺茂一『わが町新宿』紀伊国屋書店(1981)2013は戦前戦後の新宿を知るのに最良の本だろうし、実に面白い。その実態をもう少し客観的に綴った早稲田の建築の教授だった戸沼幸一編著『新宿学』紀伊国屋書店2013は知っていたと思っていて知らなかったことがたくさん書いてある。
びっくりしたのは、その昔は新宿よりはるかに四谷が賑わっており、田辺も荒木町に夜な夜な遊びにきており、慶應を卒業したときも荒木町の料亭で祝賀会をしたそうだ。それから芸者遊びにはまったとか。
芸者遊びといえば、母の実家は東北一大きい料亭であり祖母はその女将。小学生のころは夏休みといえばその料亭、一心亭に行って夏を過ごす。そこには専属の芸者、テルさんとセツさんがおり、僕ら兄弟の遊び相手で、パチンコ、映画、銭湯と連れて行ってくれたのである。夜になれば、三味線と皷を叩き、僕は熱燗係りで人肌に酒を温めて部屋に運んだ記憶がある。店には東北の政財界の要人が来ていた。渋沢栄一の書生でその後十和田観光電鉄をはじめ多くのホテルの社長になった杉本さんはオープンのキャデラックでやって来てよく助手席に乗せてくれたものである。祖母が他界したとき。僕と杉本さんが弔辞を読んだのを覚えている。
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