建築を恋人に
卒業や修了の季節になるとさてこの学生たちがどういう風にこれから生きていくのだろうかとちょっとは考える。建築の世界はデザインをしようとすればするほど働く条件は過酷になる。これは労働環境という視点で考えると改善するべきこと思う一方、例えば建築デザインが大学の研究のようなものであると考えるとそれを純粋に労働として捉えるのも難しいと思う。例えば寺田虎彦はこう言った。
「頭のいいに人には恋ができない。恋は盲目である。科学者になるには自然を恋人しなければならない。自然はやはりその恋人にのみ真心を打ち明けるものである」建築家というのはどこかこの科学者のようなものである。建築を恋人としなければ建築から真心は送られてこないもののようだ。
建築を恋人にした瞬間に建築は労働ではないことになり、それは苦しいものから楽しいものになるはずである。日本の世の中にそうした楽しさを享受できる場所がどれほどあるかわからないが、建築を恋人にできる人はそういう場所をみつけて建築を楽しんでほしいと切に願う。しかしもちろん楽しさを得るために苦しさは表裏一体で付きまとうことを忘れてはいけない。
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