再開発の時代から再利用の時代へ
加藤耕一『時が作る建築ーリノベーションの西洋建築史』東京大学出版会2017がとてもいい本だと勧めてくれたのは飯尾さん。だいぶ前に買って積んでおいたのだが昨日から一気に読んだ。最近読んだ建築の本の中では最優秀賞である。ぜひ学生の皆さんには読んでいただければと思う。その最も面白いところはその歴史をみる枠組みである。西洋建築史を「再利用」「再開発」「修繕・保存」という3つの視点で見直している。そもそも西洋建築は古来「再利用」を前提として人口の増減に対応していた。ところがルネッサンスの時代にその一つ前の時代である中世を野蛮なものとして壊して作る「再開発」の考え方が幅を効かせるようになる。しかし19世紀に中世が見直され始めると中世を野蛮として古典デザインで蓋をする方法こそが野蛮とされ、古典で蓋をされた中世を修復、あるいは保存する運動が生まれるわけである。加藤の主張は建築史を様式という「形」で分類するのではなく形を生む既存へのスタンスをもとに時代をみるべきだというものである。もちろんモダニズムはいうまでもなく「再開発」の時代であるが21世紀に入りドラスティックにスタンスは変化している。いうまでもなく「再利用」の時代に突入しているわけである。そしてそれは何も経済の停滞が産み出した例外的な特殊なことではなくで古来建築は普通にそうだったということなのである。
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