キーワード選択に理由はない
『言葉と建築』を読んだ人は多くいると思うが、あの本の第二部のモダニズムのヴォキャブラリー18個をどういう基準で選んだかということについてあの本の中では多くが語られていないが一言だけ序の中に書かれている。それはレイモンド・ウィリアムズの『キーワード辞典』(1976)を規範にしたと。ではその本はというと130余りの単語(キーワード)の解説本である。この本が社会学におけるカルチャラルスタディーずの嚆矢であるということは置いておくとして、この130の言葉をどういう基準で選んだかはやはり書かれてはいない。しかし翻訳者の解説を見るとこれを選んだ基準はこれらの言葉は日常使われている意味の裏に多くの別の意味が潜み、その意味が歴史の中で隠蔽されねじ曲げられ現在に至っている。それゆえこれらの言葉に潜む意味が歴史をあらわにするわけでこの言葉の選択には著者の主観的な価値判断が働いているわけである。解説者曰く「『キーワード辞典』のよいところのひとつは、そうした客観性、中立性を装う身振りを一切見せないところだ」と言っている。これを『言葉と建築』に当てはめてみれば、やはりあそこで選ばれた18の言葉はまさにフォーティーの価値観でありそこには客観性も中立性もないということなのだと思う。明日は建築論キーワード辞典作成の打ち合わせだが、こういうスタンスでいいじゃないかという気にもなる。
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