理科系の作文技術
木下是雄『理科系の作文技術』1981は2017年に82版が出て100万部以上売れている驚異的ベストセラーである。この本を知ったのは先日読んだ橋爪大三郎の『正しい本の読み方』に著者の文章術はここからきていると記されていたからである。そして手にしてみると本書の肝心の部分は私がアメリカ留学の最初に教わった作文技術そのままであることが分かり嬉しく思った。著者の作文のポイントは僕なりにまとめると以下の7点になる。
①文は短く(50字目標)
②英語の関係代名詞的な修飾文を極力挿入しない。
③横道にそれる文章をなるべく入れない。入れる場合は入れることを明示する。
③一段落には一つのことを書く
④段落の最初にトピックセンテンスを置く(それはその段落で言うことを一言で書いた文)
⑤事実は言い切り参照元がある場合は明示する
⑥事実の記述は具体的な程よい
⑦意見は「私は⚪︎⚪︎と思う」と記し意見であることを明示する。
この掟は理科系のレポートや論文を前提にしたものだが、既述のとおり社会学の大家、橋爪大三郎が自ら教本とし、かつ今我々に勧める本である。つまり理科系レポート用の特別な文章の書き方だと橋爪氏は考えていない。また私がアメリカで教わったことはまさにこれであり英語の一般的作文術でもある。そして加えて言うと私の友人の新聞記者は文系の学生より理科系の学生を採用したいと言っていた。その理由は理科系の作文技術が新聞にも有効だということなのかもしれない。しかし理科系の学生が理科系の作文技術を習得しているとは限らない。むしろ学生の文章を読んでいていつも頭が痛いのはこの掟を全く守らないことによる。特に事実と意見を混同する点である。そういう不快感に苛まれているので自分の著書でも人の意見はすべて引用の形でインデントさせるくせがついている。そのせいでわたしの本は読みにくいという批判をいただくのだが本文中に紛れ込ませているうちに自分の意見にしてしまうことを危惧するのである。これから卒論、修論のシーズン。是非みなさんご一読を。
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