人を豊かにすること
今日は工学部の新年会で主任も一言と言われ言おうと思ったことがあったのだが、直前に一人一分と言われ急遽話すことを変えた。そこでその時言おうと思ったことを記しておこう。それは年末理科大に招聘してワークショプを指導してもらったアメリカの建築家ジェフ・ブロックと飯を食いながら話していたときのことである。「タク、何故トランプが当選したと思う?」と聞くので「白人低所得者層の心を掴んだからだろう」というと「そうなんだけれどその時の決め文句は何か分かるか」と聞く。答えは「エリートは人々を豊かにできず、知性は何の役にも立たなかった」ということだったと彼は分析する。プリンストン、コロンビアとまさにエリート街道を進んできたジェフにとってこの言葉は突き刺さったに違いない。そしてその言葉に共感する人間がアメリカに半分くらいはいたということである。そしてそうした流れは雪崩のように世界に伝播している。日本でもそれに近い現象が起こりそうで踏みとどまっているがいつそうなるかわからない。
年末年始に度々思い起こしていたのはこのジェフとの会話であった。我々は知性を磨くのが仕事であり、日本のエリート層を教育する立場にあるのだが、果たして我々のやっていることは人々を豊かにすることに貢献しているのだろうか?もし仮にそうではないとするのならモダニズムが起こした間違いをまた繰り返すべく進んでいることになる。
僕たちは真摯にこのことに考えを及ばさなければいけないのだと思う。果たして建築の意匠が人々を豊かにするとするならそれは何なのか?
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