「みんな」でもなく「ひとり」でもなく
『ひとり空間の都市論』 ちくま新書2018の著者 南後由和は震災以降、「みんな」「つながり」「コミュニティ」の重要性を説く議論が溢れているが、そうした言葉を安易に口にする一歩手前で都市と「ひとり」の分かちがたい関係について考え直してみたいと思ったと言う。それは「みんな」が叫ばれても都市には「ひとり」へのニーズも高いからである。コワーキングスペースの設計をしていると電話ボックスのようなお一人様スペースが必要と言われる。商業施設にはお一人様の隔壁付きの食べ物屋が増えている。かくのごとく都市の魅力は精神的に「他者と距離」をとり「匿名性」を維持しながら「自由」を得ることに魅力があるからである。だからなんでもかんでも「みんな」のためのものであるわけではなく「ひとり」を守ることも必要なのである。どちらかに振れすぎず、そのいいバランスにしか建築も都市もありえない。
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