欲望する建築
昨日読んでいた南後さんの本のタイトル『ひとり空間の都市論』はきっと出版社の人がつけたんだろうなと思った。というのもこのタイトルが社会記号化された「おひとりさま」という言葉を想起させるからである。社会記号とは「ひとびとの欲望の暗黙知」を言語化したものであり、ある時期社会に広く流布する言葉である(嶋浩一郎、松井剛『欲望する「ことば」ー「社会記号」とマーケティング』集英社新書2017)。社会は欲望を表す言葉として社会記号を必要とし、ひとたびある言葉が社会記号化されるとその言葉を実証するような事例をジャーナリズムは追いかけそれに刺激されて一般の人々もそれを追いかけるのである。だから本のタイトルも社会記号をちょっとお借りして購買意欲を掻き立てようとするわけである。
社会記号は4つに分類されている。1)ラベリング、2)行為のモーチベーション、3)スティグマ、4)カテゴライズである。「おひとりさま」はカテゴライズだろうか?こうした社会記号を建築も大いに利用している。震災以来「みんな」とか「絆」が社会記号化されると「みんなの家」が登場し、「シェアリング」「⚪︎⚪︎2.0」「インスタ映え」なども続々と建築名あるいは言説に流用されている。人々のニーズがないところに社会記号は生まれないのだから建築がそれに乗るのは間違いではないが薄命の社会記号も多々あるから時間を読んで使わないと無責任なことになる。
と今日読んだ『欲望する「ことば」ー社会記号とマーケティング』集英社新書2017
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