定着の方法
ペルーのルイスと「建築の制作」について応答している。彼は建築制作の最初に現れると思われるドローイング発生の前に建築の萌芽があり、それは意味のよくわからない絵のようなものだったり、ストラクチャーのダイアグラムのようなものだったりするのではないか?そしてそれは表意文字のようなもの、あるいはその表意文字が崩れた日本語の仮名のようなものかもしれないと想像をたくましくする。
大澤真幸が『考えるということー知的創造の方法』河出文庫2017で言っている。何か新しいアイデアが生まれそうな時は額の前10センチくらいにそれが浮いているのだが、それを放っておくとどこかに行くが、すぐさま言葉にすると捕まえ損ね思っていたものとは違うものを手にしてしまうことがあるので上手に捕まえなければいけないという。
上でルイスが言っているのはまさにこの現れたアイデアを定着化する技術の話であるが、そもそも建築の制作は何時始まるのか?クライアントからこういうものが欲しいと言われて始まるわけではない。常日頃考えている抽象的な「理想とする建築」にクライアントの具体的なリクエストが与えられる。そこで理想が具体の条件に沿って形象化する。そのプロセスは複雑でインプットすればすぐさまアウトプットされるわけではない。大澤の人文的アイデア同様それはあるとき額の前10センチに浮いてくるのでそれを上手に捕獲しなければならない。それを放っておけば逃げていくし、焦って捕まえると違うものを手にしてしまう。それゆえその定着の技術が議論となるわけである。
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