今なぜオブジェクトか
先日コンペの審査でお会いした隈研助教の平野利樹さんに博士論文読ませてくださいと言ったらすぐにPDF送ってくれたので昨日の甲府往復で精読した。とても読みやすくモダニズムから2000年までの歴史をオブジェクトというキーワードで紐解いてくれた。研究室の輪読本の一つにしようと思う。僕は拙著『建築の条件』のソーシャルの章で関係性の美学を引いてなぜ美術や建築がリレーショナルなものになったのかということを書いたが実にアイゼンマンのあたりからもリレーショナルな話は解読できるということに目からウロコだった。
コリン・ロウ、ピーター・アイゼンマンはオブジェクトに比較的肯定的だがすでに関係性が入り込み、ペーパーレススタジオのグレッグ・リンはアイゼンマンのフォールディングを前進させオブジェクトを批判的にとらえしなやかさへと昇華する。スタン・アレンはオブジェクトからフィールドへを著し完全に立ち位置を建築の外部へ移動する。その後世界を関係性のなかで捉えることへの反動がオブジェクト志向の哲学に後押しされて登場してきた。それを建築で明示したのはディヴィッド・ルイ。2012年のことである。そこで主張されているのは建築が環境内のパラメーターが与える一時的な計算結果となり・・・・建築が持っていた魔力は取り除かれたという点である。こうしたルイのような気持ちを持っている学生が昨今増えている。特に僕の研究室には少なくない。そしてそれは割と正常な感覚だろうなと思っている。
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