服屋さんのコメント
坂牛卓先生より「教養としての建築入門」をお送りいただいた。
著作を半年ごとに発表される驚異的なハイペース。
今回の書籍は、細かくテーマが分かれているので、高校生でも読み始められるほど間口が広い。
用・強・美という大きなフレームから話が始まるが、話題が次々に切り替わるので、さらっと読める。設計者としては、第一部 鑑賞論ー建築の見方にある、美学、哲学、建築史の膨大なレファレンスに刺激をうけた。(途中で建築心理学にも触れるので、感じ方に近い)第二部 設計論は、人によって作り方が違うので、なるほど著者の場合はこうなのかと自分と比較しながら読むことになる。
見開き中ですぐに次の話題に切り替わるので、話題の変化についていくのが大変な側面もあるが、逆に、どういった読者にとっても興味ある項目が出てくる、ミニ辞典のような書籍であると感じた。
大学で建築分野の教育に関わっていると、建築に関するどのような話題も計画、構造、環境という分野に分けて考える癖がついてしまう。それは専門分野外にはコメントしない方が身のためだという態度でもあるが、実際には建築は一般に開かれた存在である。
建築家による類書は、
新・建築入門―思想と歴史 (ちくま新書) 1994 隈 研吾
天下無双の建築学入門 (ちくま新書) 2001 藤森 照信
があるが、どれも著者の歴史観が強く印象に残るものであり、読者はそれをもとに自身の歴史観を考え続ける起点となる。
一般向けに設計者である単独著者が書き下ろすことによって、もう一度、<建築入門>ができるのは、幸せな体験であり、多くの若い人に読んでほしいと感じた。
中公新書の扉絵は、建築家 白井晟一(1905-1983)デザインです。初めて手に取った人は扉にも注目してみてほしい。
帯をとったら、なんとなく、落ち着いて読むことができた。
https://www.nanyodo.co.jp/php/ctrl_n.php?cate=kosho_bk
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