森さんのコメント
『教養としての建築入門 見方、作り方、活かし方』について、著者の坂牛卓氏から感想を述べるようリクエストをいただいていました。夏休みの宿題を、ギリギリのタイミングで提出するような気分で投稿いたします。
企業間でリスキリングが叫ばれる一方、これまでの知識を整理する「振り返り」も重要となろう。自分なりのベンチマークを持ち、そこからの距離で自分の今の仕事を測ることで、今後の方向性の見極めができる。そんな意味から本書は、特に建築を生業とする中堅以上の人たちのバイブルになり得ると直感した。不変的な歴史をベースとすることで、これまでにない新たな可能性も見えてくるだろう。
個人的には『歴史でたどる建築再入門』といったイメージで最初から読んだ。というのも、第1章で用いているウィトルウィウスによる「用・強・美」の軸が強烈に脳裏に焼き付けられ、最後まで引きずられたからだ。方や坂牛氏の日建設計時代の担当プロジェクト、最近作も全体の中に巧みに配されている。もちろん建築に興味を持つ一般の人やこれから建築を学ぼうという若手にも読んでほしい書ではあるが、坂牛氏のペースに巻き込まれない注意も必要だろう。
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