生きられた家
多木浩二の『生きられた家』は1976年に初版が出るが、その原型となった文章は篠山紀信の写真集『家』1975に付した論考「生きられた家」である。この写真集は40センチ×38センチ程度ありページを括ることに息を呑む日本の民家の薄暗い漆黒の空間の迫力に満ちている。多木の家をめぐる思想は多木がかねてから抱いていたものなのか、この写真によって喚起されたものなのか分からない。『生きられた家』は日常の再認識であり、篠原一男はその日常を否定したし、民家をキノコと呼んで建築家の創作対象ではないと言ったわけで、ここに多木と篠原の埋め難い溝が生まれたと言って良いのだろう。
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