山本の視点を批判的に読む
今村さんが訳されたヴィドラーの『20世紀建築の発明:建築史家と読み解かれたモダニズム』はモダニズム建築の本ではなくモダニズムの本であり、モダニズムという思想がどう作られたかを綴った本である。これを読むとバンハムやギーディオンがいかに歴史をうまく作り上げていたかがわかる。その時代40年代、60年代を肯定するストーリーと作り上げている。これを日本で見るなら例えば山本学治の『日本建築の現況ーその敬太60年代の展開』はバンハムの第1機械時代に遅れること10年くらい1969年に出版された60年代論である。これを読むとバンハム同様いかにして日本のモダニズム(あるいは60年代の建築)を肯定しそれがいかに可能になったのかという筋道で書かれているわけである。しかしバンハム史観がすでに偏った見方であるのと同様。山本を批判的に読む視点というものがあるはずである。21世紀から見る時20世紀の中に21世紀がどのように作られてきたという別の見方があるはずなのである。
レイモンドのRCの教会
目黒にアントニー•レイモンドによるRC構造の教会がある。聖アンセルモ目黒教会(1954)打ち放し折板構造の力強い姿である。中に入っていないがcreative commons flicrの写真をお借りするとこんな感じ。折板の壁屋根が素晴らしい。
君たちはどう生きるか
本日の青山ブックセンター六本木の文庫本売れ行きランキング1位は吉野源三郎『君たちはどう生きるか』(岩波文庫)である。吉野のこの本は漫画化されてこちらもベストセラーになっていることを東工大の奥山先生から聞いた。吉野は教育大附属のOBであり確か中高のどこかでこの本を読まされた気がする。漫画の方を買って読んでみたがなんだかよく覚えていない。でも久しぶりに学問とか哲学とか正義とかということを中学生レベルのことばで素直に考えさせられた。いい本である。こういう本がベストセラーになる日本は捨てたもんじゃない。
リズム感
ベートーベンの運命の指揮を見ているとよくわかるがあの曲の最初の音は一拍目の後ろから出ている。指揮者が一拍目を振り下ろして2拍目に向けて振り下ろした指揮棒を上がる寸前で音が出ている。これが日本人にはわからないというのがこの本(『日本人とリズム感』青土社2017)の主旨の主たる部分である。今ジャニスジョプリンを聞きながらこの文章を書いているがいかに裏拍が音楽を作っているかがよくわかる。一方日本人は農耕民族は皆で共同して行動を開始するのでその時重要なのは表拍だという。これに対して西洋騎馬民族は馬の蹄の音が染み付いている。蹄の音には裏拍が見事に入っている。さらに西洋の言葉には冠詞があるがこれが弱起のようなもので表拍(主語)を発音する準備音のようだというわけである。だから冠詞は小さく発音するのが西洋語のルールなのである。
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