Taku Sakaushi

Diary

視覚論の変化

On March 7, 2011
by 卓 坂牛

始発のアサマに乗り長野へ。これに乗るにはかなりの早起きである。この時間四谷駅の中央線ホームは未だ開いていない。午前中最後の教室会議。まだまだ学科の仕事はいろいろある。試験、そして卒業式。昼に研究室の備品のチェックをしてもらい、午後一のアサマでとんぼ返り。車中『足が未来をつくる』を読み続ける。映画からテレビに変わった時イメージがビジュアルに変わったという。イメージは見るものであり、ビジュアルはその中に入って感ずるものだと言う。それは録画かライブかという差も関係する。また60年代を境に視覚から眼差しへ視覚論の位相が変わったという。何が見えるか?から何をいかに見るかに変わったというのである。なるほど面白い指摘である。理科大に向かう。研究室所属の面接をする。これまでの製図作品を見せてもらう。皆なかなか面白い。これは少し嬉しい。

中世は触角や聴覚の時代だったんだ

On March 6, 2011
by 卓 坂牛

朝から原稿の骨格づくり。しかしやり始めてもちょくちょく来るメールに答えたり、思い出した郵便物まとめたり、そんな雑用が仕事を切り刻む。昼を食べてからやっと書き始める。4時ころまでどんどん書いて四谷のジェクサーに行って一っ走り。汗を流して戻ってまた書く。今日長野に行こうと思ったが明日の朝一の電車で行くことにする。
原稿書きながらこの本(人間主義の建築)の著者ジェフリー・スコットが美術史家ハインリッヒ・ヴェルフリンの影響を強く受けていることを痛感。感情移入美学を紹介するだけではなく、建築を空間としてとらえる当時のドイツ形式主義の視覚優先論がここにも表れている。
ところで視覚はフィドラー、ヒルデブラント、ヴェルフリンと繋がるドイツの芸術学者によって形作られそして5感の王様になるのだが、海野弘『足が未来をつくる』洋泉社2004を読むと彼はマーティン・ジェイの『伏せられた目――二十世紀フランス思想におけるヴィジョン非難』(1993)を紹介し視覚の変遷を次のように説明する。「それによると古代ギリシア文化は視覚中心であった。・・・・ところが中世になると視覚は第一の座からすべり落ちてしまう。そして、聴覚や触覚が最も大事な感覚とされていたという」。しかしその後活版印刷の発明、カメラの発明が視覚を感覚の王の座に押し上げたというわけである。
視覚優先の時代はそう簡単に壊れるわけはないのだが、他の感覚も我々の生活を豊かにしているということをわれわれはもっと自覚的になった方がいいと思う。

原稿書くための資料読み

On March 5, 2011
by 卓 坂牛

朝から『人間主義の建築』の翻訳序文にとりかかる。と言ってもそのために1980年版のディビッド・ワトキンのイントロダクションやその他の文章を読む。ワトキンのまとめではこの本の要点は4つ
1)19世紀に建築を説明したり正当化するのに使われた、倫理、生物学、機械論を否定した。
2)感情移入理論に基づく建築美学を紹介した。
3)バロックを理想的人間主義原理の表現として肯定した。
4)空間に価値を置く建築解釈を展開した。
一般にこの本は2)の意義が強調されるのだが、4)に指摘されているとおり、ドイツフォルマリズムの流れを汲み、特にヴェルフリンの影響が色濃く出ているというのは他の論文でも指摘されている。
まあこうした歴史的位置づけはよしとして、人間主義がどのように現代的文脈で意味を持つかを書くのが僕の役割であろう。それは明日考えよう。
夕方事務所に行きスタディの進行を見て打ち合わせ。夜理科大の先生たちと食事。人数が少ないから家族のようである。

後期近代の眩暈にリアリティを感じる

On March 5, 2011
by 卓 坂牛

午後Tさんと設計打ち合わせ。いいこと言うな。スタディが増えるのだが良くなるスタディは大歓迎。ありがたや。
夕方ジョック・ヤング(Young, J.)『後期近代の眩暈』青土社2008を読む。後期近代とは1960年代後半以降のことであり、そこでは社会が包摂型から排除型に移行し始めたという。そしてこの排除型社会の惨状を著者は眩暈(vertigo)と言う言葉で表現している。資本主義の急速な進展とグローバル化は仕事の効率化を生み必然的に人員削減を招き失業率を上げる。加えて構造的世界不況がそれに追い打ちをかける。そこでは経済的に不要とされるアンダークラスが生まれるだけではなく、逸脱行為に対する不必要なまでの不寛容さが蔓延すると指摘する。経済的な崩壊は家庭も壊し、離婚率も上げ、シングルマザーも増加させる。そうした家庭は経済的に困窮しその子供は満足な教育も受けられないという悪循環を生む。そしてそういう子供を排除する社会が生まれていく。そういう子供の逸脱行為は普通の家の子供のそれとは同等には扱われない。
要は世の中の歯車に乗れない多くの人々を排除する社会が構造的に世界的に生まれてきたということなのである。ジャック・アタリの『国際債務危機』を読んだ後だとこの眩暈がリアリティを持って響く。しかし、こんなことがまかり通る社会は断じてまずい。

メタ理性

On March 3, 2011
by 卓 坂牛

『国家債務危機』を読んでいるとフランス革命だってとどのつまりは財政破綻であることが分かる。金にいとめをつけずに贅の限りを尽くせばああなると言うことだ。
一方フランス革命を哲学的に見ればデカルト的世界(理性的世界)が社会を変えたということになる。しかしそのデカルト的世界が突き進んだ結果はとても理性的とは言えない二つの大戦争を生んだ。そしてそれは経済的に見ればやはり財政危機を乗り越えていくための政治手法だったわけである。
バタイユの専門家酒井健による『シュールレアリズム』中公新書2011を病院の待合室で読んだ。彼らは戦争にデカルト的世界の無力を見出だしそれへのアンチテーゼを突き付けたと記されている。つくづく理性とは何なのだろうかと考える。経済を救えず、そして文化を陳腐化させる。理性は不要なのか?いやそれでも理性はもちろん世の要である。理性を越えたメタ理性が必要だと言うことであろうか?

庁舎は神殿か?

On March 2, 2011
by 卓 坂牛

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●栃木県庁 日本設計 2007年 97,954 m²
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●群馬県庁 佐藤総合計画 1999年90,191㎡
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●茨城県庁 松田平田坂本 1999年 81,393m²
打ち合わせで栃木県庁に出かける。湘南ライナーで宇都宮まで行く。1時間半も乗るので車内で仕事をしようとグリーン車に乗った。このグリーンはホームでスイカに課金して車内で席の上部にタッチするとランプが赤から緑に変わる仕組みである。この仕組みが面倒くさいと言って怒っているインテリお姉さんがそばにいた。JRは独占企業で競争が無いからサービスが悪い。JALの方がよほどいいと怒っている。スイカをタッチするなんてそれほど面倒なことでもないだろうと思い怒られている若い女性車掌が気の毒に思えた。あんな風に文句を言いたくなる時がこないといいなあと思わず溜息。
宇都宮には来たことがあったが県庁に来るのは初めて。バスで下車して徒歩で近付き驚く。すげーゴージャス。栃木県の人口は長野とほぼ同じ200万位だけれど庁舎は天と地。
建物に入るとまた驚く。巨大吹き抜けで仕上げも石。こりゃバブルの産物かと思い、クライアントに会って聞いてみると「できたのは数年前。無駄そのもの、茨城県庁や群馬県庁に対抗して作ったようなものですよ」とおっしゃる。調べると確かに2007年竣工である。
もう少しなんとかならんのだろうか?それに役所建築ってどうしてどこもかしこも判を押したようにシンメトリーなのだろうか?庁舎は神殿か??

これが山梨にある塩の山

On March 1, 2011
by 卓 坂牛

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●これが塩山だ
早朝あずさで塩山へ。いつも撮りたい撮りたいと思っていた写真が今日は撮れた。これが塩山である。ある時誰かにこの山は塩でできていて武田信玄がこの塩を敵にやったのだと言っていた。が定だかではない。
午前中午後と定例。後20日。
塩山への往路で『東京都知事』の都財政の章を読む。東京は全都道府県の中で唯一戦後地方交付税を受け取っていないそうだ。つまり地方税の税収が多いわけである。フィンランドの国の予算規模と同程度の12兆円という予算の3割は法人税で賄われている。ということは景気が歳入に大きく影響する。2009年度の税収はリーマンショックの影響で約1兆円減じたというし今後も下がると予想されている。
さて塩山からの復路ではジャック・アタリ(Atari, J.)林昌宏訳『国家債務危機』作品社2011を読み始めた。古来国家とは国力をつけながら(つけるために)債務を繰り返し、それを税収の増加で返済し、あるいはインフレにより解消したという。しかるに経済が下降線の時には債務の返済は不可能でありそれは滅亡へ向かって進むのだと始まった。なんと恐ろしや。しかもここに出てくる国家債務最悪の国としてあげられているのは他なる日本である。サルコジ大統領の政策アドバイザーと聞いてもよく分からないが、欧州復興開発銀行初代総裁と聞くと彼のもとに集まったデーターにはひどく信憑性を感じてしまう。

このオフィス暗そう??

On February 28, 2011
by 卓 坂牛

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●プランが想像できないなあこのオフィスビル。
午前中に四谷の医院で健康診断。帰りがけ見なれたビルの横っ腹が見えてびっくり。となりのビルが解体されたんだっけ?それにしてもこんな奥が深くて両側挟まれていると暗そうだなあ。
午後事務所に戻る。レクチャーの内容の確認でスイスのハンス・ユルグ・ルッフとのメールのやり取りをしているのだが、時差があるのに昨晩から3往復の交信である。いやはやスイス人は几帳面である。
夕方金箱さんが来て構造打ち合わせ。5時に始まり終わったら10時。構造模型見ながらなかなか決まらない。今度の施設は分棟で4棟あるが3つデザインが違いそれぞれ木構造を見せようとしているので一筋縄ではいかない。内装制限がかかる建物で木を見せようとすると構造を見せるのが一番効果的なような気がして、構造模型を早々に作り始めている。ヤマでもそうだったけれど構造見せようとすると設計はえらく時間がかかる。あれも大変だったけれど大変な設計はその痕跡が残るものである。

八潮フォーラム

On February 28, 2011
by 卓 坂牛

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●立派なポスターが貼られていてびっくり
今日は今年度最後の八潮仕事。市民参加のフォーラムである。第一部は小川、寺内先生による我々の公園案の説明。第二部は槻橋先生司会で僕と曽我部先生、筑波大の渡和先生、トデックの中村さんによるシンポジウム。シンポジウムには市長、商工会議所所長、学生も振られ意見を述べうまく来季に話は繋がったようである。
今日は今年度最後ということもあり、先生連中もまあお疲れさん会でもするかということでつい浅草下車でワインのお店へ。
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●大変調子いい感じのO先生とS先生

東京都知事の力

On February 27, 2011
by 卓 坂牛

午前中に若松均さんのオープンハウスを拝見しに麻布へ。麻布はもちろん一等地だが不便な場所。そんなわけで今まであまり足を踏み入れたことは無かったが、気持ちのいい住環境である。相変わらず少し乱暴で、でも見ごたえのある設計を見せてもらう。いい気分で駅近くのカフェへ。昼食後行こうかどうしようか迷ったが南北線一本なので不動前の藤村さんのオープンハウスにも足を伸ばす。http://ofda.jp/column/。午後事務所に戻り大きくなった模型を見ながら次に検討すべき項目を挙げていく。やることはまだいろいろある。
帰宅後風呂で佐々木信夫『都知事』中公新書2010を読む。東京のGDPはカナダを抜き世界第9位の国に匹敵し、世界上位500企業の都市別本社数51社で2位のパリ27社に大きく水をあける。都市別GDPは文句なく世界トップ。国内的に見ても日本のGDPの2割、国税収入の4割が東京から生まれ、本社本店外国企業の5割が東京にある。この辺まではまあ想定内だったのだが、一番驚いたのは大学生の4割弱が東京で学んでいるという事実。そんなに学生がいる都市なんだ。やはりマンモス大学が多いのか?
知事と言うのは直截選挙で選ばれているので議員の互選で選ばれる首相より市民の代表という意味合いが強い。政治ゲームの中で決まる首相とはわけが違う。首相がどうなっても日本の政治は今のところあと5年くらいこの体たらくが続くような気がする。それは首相の資質の問題ではなく政治のルールの問題でありルールを変えていくのに時間がかかると思うからだ。一方知事と言うのは権力が集中しているのでやろうと思えばいろいろなことができる。横浜、大阪、宮崎と見れば分かる。だから次の知事の資質は首相とは異なり直接政治に影響を及ぼす。そして東京都の施策は半ばイコール日本の進む方向に大きく左右する。その意味では次の都知事選はとても大事な選挙だと思う。

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