Taku Sakaushi

Diary

多様性を包容

On December 17, 2010
by 卓 坂牛

朝一でゼミ。今日の輪読本は土屋淳二『モードの社会学』。ファッションの社会学的分析では成実弘至の著書は定評があるが、それらはトピカルな話題をその都度フィーチャーしており初心者向けではない。一方土屋さんのこの本は上下巻あり体系立っておりやや生真面目だが、学生にきちんとした用語の定義から学んでもらうには好著だと思う。特にファッション、モードという概念を過去の使用例から正確に定義づけており、これらを建築分析に借用する場合も誤解を生まない。
午後製図。今年の2年生は昨年に比べるとややデザインの意欲が希薄なようにも感じていたけれど二つ目の課題ともなるとエスキスの会話も徐々に深みが増してきたようにも思う。特にデザイン論で講義しているものの見方や概念が応用されるのを聞くと少し嬉しくなる。
夜のアサマで帰宅。車中読みかけ渡辺靖『アメリカン・デモクラシーの逆説』を読む。著者はアメリカの陽気で公平で自立的な側面を好ましく思う一方でそうしたアメリカがいつでも山積みの問題を抱え右往左往する姿にジレンマを見る。オバマがあれだけ多くの支持を得て大統領になりながらその政治信頼度は戦後最低になってしまうのはどうしてなのだろうか?もちろん実態として数字の上でアメリカが豊かになれていないという事実はある。しかしではブッシュのようなアメリカに戻る方が正しいことなのだろうか?常にカウンターパートが様々な形で登場して強い方向性を打ち消していくのが最近のアメリカなのだろうか?まあそれを言えば日本も同じようなものなのだが。多様性を包容するということはとても難しいことだろうがそれを諦めてはいけない。

クライスラーの工場がコンヴァージョンされて集住へ

On December 16, 2010
by 卓 坂牛

101208%E3%83%96%E3%82%A8%E3%83%8E%E3%82%B9%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%83%AC%E3%82%B9%E4%BD%8D%E3%81%99%E3%82%890%E5%86%99%E7%9C%9F.JPG
午前中のアサマで大学へ。駅から自転車で大学へ向かう途中でばったりアルゼンチン留学から戻った香川君と会う。1年近く会わなかったけれどアルゼンチンに行ったのがつい昨日のように思えてくる。ロベルトから預かったという本を貰う。この本Buenos Aires Ayer y Hoy 英語で言えばBuenos Aires now and then ブエノス・アイレスの今と昔が見開きの両側に掲載されて説明がついている。ペラペラめくっているとこんな面白い写真発見。左側の写真は20世紀初頭でクライスラーの工場・オフィス。競輪場みたいな楕円のバンクは走行試験コース。その建物が20世紀後半に集合住宅と商業のコンプレックスにコンヴァージョンされた。結構大胆な変化である。敷地はラテンアメリカ美術館のすぐわきで僕も何度となくこの前は通ったことがあるが、こんな楕円の中庭があるとは知る由もない。

responsive architecture

On December 16, 2010
by 卓 坂牛

Doc-10-12-16_13-28-page-1.jpg
一日事務所で打ち合わせ。年内に塩山現場仕上げ未決事項を決定したく荒探し。一方、「周辺と呼応する建築(responsive architecture)」スタディは粛々と進む。こういうスタディは仕事の谷間に蓄積しておかないと。仕事が来てからでは手遅れで、、、

自己評価申告書の緩さ

On December 14, 2010
by 卓 坂牛

この季節になると恒例の大学業務の自己評価申告書というのを書く。事細かに自分のやったことを書いて規定の点数を入れていく。そうすると簡単に合計点が出てそのエクセルシートがあなたの価値になる。民間企業ならこの自己申告書をもとに上司とコミュニケーションして「おまえはそう言うけれど認めない」とか「なかなか良くやった」とか査定されていくのだろうが、大学では(おそらくどこの大学でも)そういうフィードバックは行われない。そうなってしまうのには二つの理由がある。一つは大学と言う場所が近年ますます組織的なヒエラルキーを排除したことにある。つまり誰かが誰かの上にたって下の人間を評価するという仕組みが消滅しつつあるからだ。次によしんば上下関係が残存している場所でも、学問の専門化は他人の領域をブラックボックス化させている。つまり人の仕事の内容について量を超えて質を評価することは難しくなりつつある。こうなると評価の基準は客観性を唯一保てる数が頼りとなる。論文何本書いたか?学会の役職をいくつやったか?学内の委員をいくつこなしたか?企業の研究費をいくらもらったか?ということがその人の価値とならざるを得ない。大学と言うところに来た時そのことには少々驚いたが、気楽なものだとも思った。企業の営業棒グラフみたいなものでノルマをこなせ契約取ってこい!!というのに近い。とは言え研究って数値だけに還元できないだろうからこんな状態だとちょっと危ないよなあとも感じるのである。

自立の思想

On December 14, 2010
by 卓 坂牛

その昔サントリー学芸賞を受賞した『アフターアメリカ』という本を読んで保守やリベラルを超えたアメリカの姿にちょっと希望を持った記憶がある。その同じ著者の『アメリカン・デモクラシーの逆説』岩波新書2010を読んでみた。あとがきにこんなことが書いてあった。ブッシュ政権で国務長官を務めたコリン・パウエルが2008年の大統領選の最中「オバマはイスラム教徒である」と吹聴する共和党の一部を戒めて次のようなことを言った。オバマはイスラム教徒かと聞かれたら、キリスト教徒というのが正解だけれど、もしイスラム教徒だとして何か問題があるのか?答えは否。アメリカではそんなことが問題であるはずがない。これを読んで日本にこうした決然とした態度をとれる政治家がいるだろうかと考えてしまった。党派性に縛られることなく自立した発想を持てる政治家である。数日前に話題にした吉本隆明の思想はこれに近いものがあるのだが、よく考えてみると今の日本でこういう発言は政治家向きではない。日本にはこういう発言をできる政治家がいないと嘆いても無意味なのかもしれない。なぜなら日本とはこういう発言が効果的に政治を動かせる構造を持たない国だからである。

6軒長屋

On December 13, 2010
by 卓 坂牛

itou%20sasaduka%E5%86%99%E7%9C%9F.jpg
午後ジムに寄ってから伊藤君のオープンハウスに行く。笹塚から歩いて7~8分だが案内を忘れてきた。スマートフォンのGPSおかげで苦も無く着いた。便利だなあ。建物は200㎡に6軒入った長屋である。高度斜線の影響で家型が双子のようにくっついた形。層毎に世帯を分けると下層階の環境が悪くなるので1階と3階をつなぐなどなかなかアクロバティックな構成になっている。外装のクロス入りモルタルがいい風合いである。
夕刻八潮先生ズたちとの打ち合わせ。公園設計の方針は決定して年度内基本設計そして来年度実施設計となる。どこでデザインの詳細検討を挟み込むかがポイントである。3月4月が山だろうか?その後浅草で忘年会。去年も来たえびす丸。去年はすっぽん。今年はあんこうである。

アクリル絵の具で空を描く

On December 11, 2010
by 卓 坂牛

%E3%82%A2%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%AB%E7%B5%B5%E3%81%AE%E5%85%B7%E5%86%99%E7%9C%9F%EF%BC%91%EF%BC%90%EF%BC%91%EF%BC%92%EF%BC%90%EF%BC%97.JPG
先日、日比野克彦を見たら気分が晴々した。彼の世界がとても豊かで自由に見えたのである。芸術は伝染するもので、自分も日比野みたいに大きな画用紙に自由な絵を描いてみたくなった。職業がらスケッチ程度ならよく描くが手帳大の小さなものである。サインペンで形をとって水彩かマーカーで色をつける。しかし今回描きたいと思ったのはそんなんじゃない。もっと大きくて自由な奴。カルトンに紙を入れて長い筆で書のような絵を描きたいのである。しかし日比野流で行くなら岩絵の具。こりゃちょっと金もかかるし、テクニックもないしどうしようかと配偶者に相談。パステルにしたら?と言われたので午前中しばしパステルでバルコニーの草など描いてみたのだがどうもあの小さなチョークのようなものを画用紙にこすりつける感じが自由じゃない。もっとスムースに楽々と描きたい。やはり水に溶いたもがいい。でも水彩は飽きた。となると油かアクリルか。油はやったことないし、自信がないので消去法でアクリルである。早速世界堂に行き気に入ったアクリル絵の具を6本とグロスワニスを一本、大小の平筆を5本。キャンバスペーパーの大型スケッチブックを一冊買ってきた。そして何を描こうか??もう真っ暗だし。昼の空を思い出し描いてみた。そらである。年末配偶者とこんな絵を描きに1日旅行へ行くことにした。僕はアクリル、かみさんは墨である。

吉本と篠原

On December 10, 2010
by 卓 坂牛

朝ゼミ。今日の輪読本は鹿島茂の『吉本隆明1968』。吉本は正直言ってたくさん読んだけれど分からないことが山とある。そして吉本解説本も結構読んだ。でもどれもおぼろげだった。そうこうしているうちに既に最初に吉本を読んでから20年以上たち、数年前にこの本を読んだ。そして初めて吉本がぐっと分かるようになった。というわけで学生にもこれを読ませようと思った。今朝久しぶりにこの本読んでみて「ぐっと分かった」ことを思いだした。それは、吉本の偉さ(鹿島のことば使い)は言うことがぶれないということ。吉本は常に自らの腹の底から湧き出る声を時流に流されずに語れる人だということだ。何だそんなことかと思うかもしれない。でも「そんなこと」をずっと続けることがどれほど大変かはちょっと考えれば分かることである。篠原一男が生前対談の相手候補に吉本隆明を挙げたことがある。その理由をことさら聞かなかったが今にして思うと妙に納得する。自分と同じ血を吉本に嗅ぎ取っていたのである。
午後製図のエスキス。夕方大林設計部に行った研究室OBがリクルートにやってきた。今年のM1は2人留学し、留学している2人が未だ帰ってこないので残念ながら聞く人が少ない。夜のアサマで帰宅。

稲荷山でカラマツへのこだわりを勉強する

On December 9, 2010
by 卓 坂牛

うまく日程が組めず今日もアズサで塩山へ。9時に現場へ。コンクリートは3階の床まで打ち上がる。8月半ばに着工して4か月半かかって年内上棟。出来高30%台。年明け2カ月で残り60%以上を仕上げるのだから来年はちょっと緊張する。気を張らないと知らぬ間にいろいろなものが出来てしまう。大学が最も忙しい時期だけに少々不安。昼前に現場を出て北河原さんの稲荷山養護学校を見に屋代へ向かう。塩山から中央線で韮崎乗り換え松本。そこから篠ノ井線で篠ノ井乗り換えて屋代という予定。ところが中央線が来ない。乗り換えスケジュールがくるい予定より遅く到着。篠ノ井線の姨捨あたりからこの建物の稲穂色の大きな屋根は何度も見ていたが中に入って見せてもらうのは初めてである。担当だった上原さんに案内していただく。県産材のカラマツの今後の活用を見据えて徹底してその使用にこだわったデザインに脱帽。しかも一般の流通を考え4寸角を基本として使用。必要に応じて抱き合わせ、それでいてデザイン的にスマートに処理されている。またパンチの効いた木のデザインは随所に見られるベニヤの箱に収納された照明ボックスもその一つ。そんなこだわりの中で子供への優しさが随所に見られとても勉強させられた。
見終わったのは5時だがもう真っ暗。冷たい雨に濡れながら長野のマンションへ。風呂につかり体を温め飯尾潤『日本の統治構造』中公新書2007を読む。2007年のサントリー学芸賞を受賞した書である。日本の議院内閣制が本来の機能を果たさず官僚支配になる構造がとても分かりやすく論じられている。

ピアノという楽器の繊細さ

On December 8, 2010
by 卓 坂牛

%E5%86%99%E7%9C%9F.JPG
朝方のアズサで甲府へ。昨日の雨があがり雲が飛んで冷え込んでいる。空気は澄み渡り甲府を囲む山々がくっきりと青空に浮かび上がる。昨晩の雨が山では雪に変わりうっすらと雪化粧。
甲府駅前は駅広整備が行われている。甲斐市にあった重文の擬洋風建築(藤村記念館)が移築されて駅広に鎮座し、その背後に丹下さんの山梨文化会館が見え、かたや駅自体が宇宙的デザインで拡張されている。いやはやなんともちぐはぐ??
現場は建具の塗装中。外構に土を入れて高さ調整。外壁の白がまぶしい。午後事務所で定例会議。
午後のアズサで新宿へ。車中高木裕『調律師、至高の音をつくる』朝日新聞出版2010を読む。スタインウェイを20台近く保有し、それをピアニストともに会場に運び込むという著者の調律師としての新しい職能の拡張に驚く。それはもはや調律師を超えピアノサウンドプロデューサーである。ピアノの調整で最も気を使うのは温湿度だと言う。それは弦楽器ときわめて近い。そう考えると確かに弦を鳴らし、それを共鳴箱で響かせる原理は弦楽器そのものである。その昔温湿度が適当ではないところで練習するときはヴァイオリンを布でくるんで弾いていた記憶がある。ピアノもそのくらいデリケートな楽器であることがよくわかった。

« Previous Page Next Page »

Archives

  • October 2024
  • September 2024
  • August 2024
  • July 2024
  • June 2024
  • May 2024
  • April 2024
  • March 2024
  • February 2024
  • January 2024
  • December 2023
  • November 2023
  • October 2023
  • September 2023
  • August 2023
  • July 2023
  • June 2023
  • May 2023
  • April 2023
  • March 2023
  • February 2023
  • January 2023
  • December 2022
  • November 2022
  • October 2022
  • September 2022
  • August 2022
  • July 2022
  • June 2022
  • May 2022
  • April 2022
  • March 2022
  • February 2022
  • January 2022
  • December 2021
  • November 2021
  • October 2021
  • September 2021
  • August 2021
  • July 2021
  • June 2021
  • May 2021
  • April 2021
  • March 2021
  • February 2021
  • January 2021
  • December 2020
  • November 2020
  • October 2020
  • September 2020
  • August 2020
  • July 2020
  • June 2020
  • May 2020
  • April 2020
  • March 2020
  • February 2020
  • January 2020
  • December 2019
  • November 2019
  • October 2019
  • September 2019
  • August 2019
  • July 2019
  • June 2019
  • May 2019
  • April 2019
  • March 2019
  • February 2019
  • January 2019
  • December 2018
  • November 2018
  • October 2018
  • September 2018
  • August 2018
  • July 2018
  • June 2018
  • May 2018
  • April 2018
  • March 2018
  • February 2018
  • January 2018
  • December 2017
  • November 2017
  • October 2017
  • September 2017
  • August 2017
  • July 2017
  • June 2017
  • May 2017
  • April 2017
  • March 2017
  • February 2017
  • January 2017
  • December 2016
  • November 2016
  • October 2016
  • September 2016
  • August 2016
  • July 2016
  • June 2016
  • May 2016
  • April 2016
  • March 2016
  • February 2016
  • January 2016
  • December 2015
  • November 2015
  • October 2015
  • September 2015
  • August 2015
  • July 2015
  • June 2015
  • May 2015
  • April 2015
  • March 2015
  • February 2015
  • January 2015
  • December 2014
  • November 2014
  • October 2014
  • September 2014
  • August 2014
  • July 2014
  • June 2014
  • May 2014
  • April 2014
  • March 2014
  • February 2014
  • January 2014
  • December 2013
  • November 2013
  • October 2013
  • September 2013
  • August 2013
  • July 2013
  • June 2013
  • May 2013
  • April 2013
  • March 2013
  • February 2013
  • January 2013
  • December 2012
  • November 2012
  • October 2012
  • September 2012
  • August 2012
  • July 2012
  • June 2012
  • May 2012
  • April 2012
  • March 2012
  • February 2012
  • January 2012
  • December 2011
  • November 2011
  • October 2011
  • September 2011
  • August 2011
  • July 2011
  • June 2011
  • May 2011
  • April 2011
  • March 2011
  • February 2011
  • January 2011
  • December 2010
  • November 2010
  • October 2010
  • September 2010
  • August 2010
  • July 2010
  • June 2010
  • May 2010
  • April 2010
  • March 2010
  • February 2010
  • January 2010
  • December 2009
  • November 2009
  • October 2009
  • September 2009
  • August 2009
  • July 2009
  • June 2009
  • May 2009
  • April 2009
  • March 2009
  • February 2009
  • January 2009
  • December 2008
  • November 2008
  • October 2008
  • September 2008
  • August 2008
  • July 2008
  • June 2008
  • May 2008
  • April 2008
  • March 2008
  • February 2008
  • January 2008
  • December 2007
  • November 2007
  • October 2007
  • September 2007
  • August 2007
  • July 2007
  • June 2007
  • May 2007
  • April 2007
  • March 2007
  • February 2007
  • January 2007
  • December 2006
  • November 2006
  • October 2006
  • September 2006
  • August 2006
  • July 2006
  • June 2006
  • May 2006
  • April 2006
  • March 2006
  • February 2006
  • January 2006
  • December 2005
  • November 2005
  • October 2005
  • Home
  • About
    • Profile
    • Team
  • Works
  • Blog
    • Text
    • Column
  • Contact
  • University
    • Lab
    • Lecture
  • O.F.D.A Home
  • #

© Copyright 2016 O.F.D.A.