Taku Sakaushi

Diary

川口先生の構造と感性

On December 7, 2010
by 卓 坂牛

川口衛先生から『構造と感性Ⅳ』法政大学建築学科同窓会2010が届く。A5の可愛らしい本である。ページ数も70ページ足らず。でも内容は濃く楽しい。磯崎さん、妹島さん、内藤さんらの名建築の構造苦労話が語られている。この本はシリーズの第四番目で木造特集。僕も見た内藤さんの日向駅も川口さんだったとは知らなかった。あれは架構だけではなくディテールまで完成されていると感じた建築だ。説明が分かりやすく、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲも読みたくなった。
夜『ことばと思考』を読む。人はことばで世界を切り分ける。ということになると、緑という言葉を持たない民族は緑を他の色と識別できないかと言うと、できるのだそうだ。なんだじゃあ人はことばで世界を切り分けてはいないのかという気になる。もっと言うと虹色の7色のことばを持っている民族と、3色のことばしか持たない民族(本当にいるらしい)ではどちらが色の識別能力が高いかというと実は3色の方らしい。ことばがある民族は連続的に変化する色相をどこかでどちらかのことばに含みいれてしまうからだそうだ。なるほどね。ことばがあるから豊かな感性を保持できるとは限らないということか。これはちょっと発見である。

ことばが世界を切り分ける

On December 7, 2010
by 卓 坂牛

久しぶりに始発のアサマで大学へ向かう。これまでは朝会議の日は前日の夜行っていた。しかし冬になると夜中の長野マンションは冷蔵庫状態。とても寝られないのでこれからは少々辛くても朝一で行くことにした。早朝出かけるのも気持ちのいいものである。車中今井むつみ『ことばと思考』岩波新書2010を読み始めたが案の定眠りに落ちた。午前中学科会議。午後ゼミ。4年の卒論梗概をそろそろ真面目に見始める時期だが、憂鬱である。毎年何書いているんだか分からない。今年はまた一段と分からない。自分たちは分かっているのだろうか?夜学科の忘年会。今日はリンゴジュースで鍋をつつく。寒いマンションに戻るのは嫌なので東京にとんぼ返り。車中『ことばと思考』の続きを読む。言葉は世界を切り分ける道具。だから世界の認識は使う言語で変わる。ということはずっと思ってきたことだが実例を示されるとさらに頷く。例えば、信号機の緑を日本人は緑と言いアメリカ人は青という。それは日本人が青という言葉を持たず、アメリカ人が緑という言葉を持たないからではない。双方、両方の言葉を持つのだがその言葉が指し示す領域が異なるのである。しかし世界には青と緑を区別しない言語が多くある。つまり青と緑の両方を同じ言葉で示す言語である。なんとその数は119言語中91もあるそうだ。もちろん世界の切り分けは名詞に限らない、形容詞、動詞に至るまでその差はさまざまのようである。

布一枚が隔てる空間

On December 5, 2010
by 卓 坂牛

医者と建築家はちょっと似ている。医学には建築と同様その分野の歴史つまり医学史というものがあるそうだ、それによれば医学とは自然科学なのか行為の科学なのかそれとも術なのか時代によってその認識が変化していたようだ。(「ドイツ医学史観」アルフォンス・ラービッシュ『身体は何を語るのか』見田宗介編新世社2003所収)昨今では医学はそうした行為総体ととらえられているようだが、建築も近い。そもそも建築という行為は自然科学ではなくそれは行為である。しかるに学校というところはそういうことを全く教えようとしない。これはどういうことだろうか?医学のカリキュラムはそういうことを教えるようにできているのだろうか?
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先日ゼミで衣服のような建築を作りたいという学生がいた。体の半分は上の空間にあり体の半分は下の空間にありそれを隔てるものは布一枚というようなスケッチだった。それを見てああどこかで見たことがあると思って本棚を探していたら出てきた。Ann Hamiltonの作品だった。写真でしかしらないこの作品を僕はすごくすごく好きである。でもこれは建築になるだろうか?
今晩長野に行こうと思ったが寒くて億劫で明日朝一のアサマに載る決意で風呂につかる。読みかけの森功『同和と銀行―三菱東京UFJ汚れ役の黒い回顧録』講談社2010を読む。なかなかのルポ。銀行もこういう世界と付き合わざるを得ないそのしょうがなさがひしひしと伝わる。

熊野

On December 4, 2010
by 卓 坂牛

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熊野本宮の八咫烏は日本サッカー協会のシンボルである
9時の飛行機で南紀白浜へ。また乗り遅れないように気張って早起きしたら7時半についてしまった。思わず朝御飯を食べてゲートで寝ないように本を読んでいたら香山先生がいらっしゃった。南紀白浜から事務所のスタッフの方の運転で世界遺産熊野本宮館へ1時間のドライブ。去年何としても熊野へと思い、しこたま本を読みいろいろ調べた挙句結局うまくスケジュールが組めずあきらめて伊勢に行った。1年越しの念願が叶った。敷地は前に写真で見ていたがこの迫力は本物を見ないと分からない。熊野川のとんでもない幅と対岸に迫る山並みには驚かされた。その山並みへ抜ける2棟に分割した配置。建物前面で来訪者を受け止める歩廊。8寸角の地元産の無垢柱。環境、計画、生産、施工、構造さまざまなことが一つに焦点を結んでいるように感じた。その後せっかく来たので本宮を拝みさらに熊野古道の王子の一つに車で連れて行ってもらい少し歩いてみた。山の冷たい空気の中に風の音が舞っていた。

LとRの発音

On December 3, 2010
by 卓 坂牛

今朝長野は大雨。傘をさしても少々濡れた。ヨーロッパから留学許可の朗報。めでたい。午前中ゼミ、講義。午後は後期後半課題の敷地見学。ここを見るのもこれが最後。傑作を作って欲しい。ちょっと早いが東京へ戻る。車中白井恭弘『外国語学習の科学』岩波新書2008を読む。この中に結構面白い実験結果が出ていた。日本人はLとRの発音差を聞き取れないとはよく言わる。聞き取れないからもちろん発音も使い分けられない。ところが、それは生まれつきではないらしい。成長の中でその差を無視することを学習してしまうのだそうだ。ある実験によると生後数カ月は日本人の赤ちゃんもLとRを聞き分けられ、その間に英語を聞かせておくと成長してもその差を認識できるようになる可能性があるとのこと。これはもちろんいろいろな場合に通用する。アメリカ人の赤ちゃんに中国語を聞かせておくと米語にない中国語の発音が上手になるという実験結果もあるそうだ。考えてみれば確かにそんなことは後天的なものであろうことは想像に難くない。もう少し早くこのことを知っていたら自分の子供に試しみたのだが、、、、、

悲しみ先取り症候群

On December 2, 2010
by 卓 坂牛

午前中のアサマで長野へ。車中で読んだ川上未映子の短いエッセイにこんなことが書かれていた。川上は将来起こるであろう悲しい出来事に備えて想像の中で先回りして、その悲しみの予行演習をするという。しかしこの悲しみ先取り症候群も親友の死を前にしてまったくその機能を果たさなかった。あの小林秀雄も母の死にあって「もっと大事にすればよかった」などとひどく普通のことを言ったそうだ。物事をねちっこく考える小林であっても死は想像を絶するものだったということなのだろう。そして最後に悲しみ先取り症候群など時間の無駄なのか?人生は今だけ考えていればよいのだろうか?と自問する。
このエッセイを読みながら夭折の哲学者池田晶子の言葉を思い出した。「死を前提にしない哲学などあり得ない」。僕はこの言葉が気に入っている。哲学などと硬く考えずとも生き方と読み替えてもよい。「死を前提にしない生き方などあり得ない」。その意味では僕らは常に先回りし死の予行演習をしたほうが良い。もちろんそれは本番の悲しみを除去するためではない。
午後会議、ゼミ。無線ルーターを買ったのだがうまくつながらない。悔しい。

植物のノイローゼ

On December 2, 2010
by 卓 坂牛

今年の夏の猛暑でただでさえ元気のないトネリコとレッドロビンが焼けた。そんなわけでバルコニーが少し淋しくなっていたのだが、先日新宿の花屋でトネリコとオリーブ見つけ、安かったので配達してもらった。そのトネリコが今朝見ると一部、葉が落ちている。枯れるというのではなく落ちている。以前、事務所にいただいたトネリコの葉が同じように落ちてしまった。プロに聞くとそれは植物のノイローゼだと言っていた。環境が急に変わると起こるというのである。このトネリコも新宿から急に四谷にやってきたからノイローゼだろうか?似たような環境ではあるのだが。

楽しいi phoneアプリ

On November 30, 2010
by 卓 坂牛

Iphoneのアプリに東京古地図というものがある。自分の居場所が江戸古地図上に登場する。Ofdaの事務所は松平家の屋敷跡。迎賓館が紀伊家というのは知っていたが防衛省が尾張家といのは知らなかった。ついで言えば上智も尾張家でニューオオタニは井伊家である。これで都会を歩く楽しみが増えた。
もうひとつ楽しいアプリを発見した。その名もispectrum。写真データーでも新たに撮った写真でも、どちらでもいいのだがそのデーター上の好きな位置をクリックするとその位置の色名が提示されるというもの。色の種類は500色程度。目の前に見える色が言葉(といっても英語だが)に変換されるというのが楽しい。精度は期待できないが、色名の勉強にはなりそうだ。

世界史の構造

On November 29, 2010
by 卓 坂牛

ちょっと前に読んだ柄谷行人の『世界史の構造』を「読む」という特集の雑誌があったので読んでみた(『atプラスvol6』2010/10)。まずは柄谷を含め大澤真幸+苅部直+島田裕巳+高澤秀次による座談会が載っている。そもそもの本が難しいのに加え座談会出席者の広範な専門領域に話が入り込むと正直その関連性はもう僕の理解を超える。そんな中で大澤が自著『不可能性の時代』と比較して語ってくれたところは分かりやすかった。大澤は自著で「歴史の終わり」と思っていた時代(自由主義経済が最良のシステムだと思われた時代)が21世紀になったくらいから機能しなくなってきたことを示す。そしてそのオプション探しの必要性を提示。一方柄谷は時代を4段階に分割し古代から互酬性、略取と再分配、商品交換、そして新たな互酬性が来ると予言的に語る。つまり大澤の問題提起に柄谷は「新たな互酬性」という答えを用意したと大澤は語る。しかしてその答えが正しいかどうかについては明言を避けている。ところで一体柄谷の言う現代の「新たな互酬性」とは何なのか?この対談の表題にもある通り、やや乱暴に言えば、それは「抑圧されたコミュニズムの回帰」なのである。もちろん回帰とは直接的なそれではあり得ないが。
さて対談とは別にいとうせいこう、斎藤環、磯崎新、佐藤優の書評(感想?)が載っている。この中から磯崎の文章を読んでみた。磯崎にしては歯切れが悪い。というか簡単に言えば磯崎は賛意を表しつつ、円環状に閉じられた4段階目にこの制度がはめ込まれていることのみを批判している。系はもっと開かれているべきだというのが彼の主張である。それはもっともなのだが、そんな大枠の話はこの際どうでもよいようにも聞こえる。磯崎からはもっと直球の感想を聞きたいところだが、磯崎でも手に負えぬ問題ということなのか??

カタルシス

On November 29, 2010
by 卓 坂牛

午後ジムに行ったついでに末広町のarts chiyodaで日比野克彦展を見る。日曜夕方の末広町は気味悪いほど人がいないがギャラリーは賑わっていた。「ひとはなぜ絵を描くのか」とは大仰なタイトル。でもそういうことを感じさせてくれた。とても良かったhttp://ofda.jp/column/。そこから地下鉄で隣り駅神田へ。友達のライブを覗く。50を超えたおじさん達の熱狂を見ると(まあこちらもそれなりに熱狂しているのだが)日比野さんの問いを反芻してしまう。「ひとはなぜ絵を描くのか」。日比野さんは自己の痕跡を残す本能?と語っていた。それもある。では、ひとはなぜ音楽をするのか?音楽は消えて残らない。カタルシスだろうなあやはり。スポーツに近いかな?

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