Taku Sakaushi

Diary

建築と法学の類比

On March 3, 2008
by 卓 坂牛

今日は会議漬け。本当に漬物のようにつぶされてエキスがしみ出て脳みそが動かない。こんな時に何か大事なことをするといいことがない。夕食後明日の会議(又)資料を作った後は休憩。今日届いた『建築雑誌』をぺらぺらめくる。南さんが編集したコールハース特集である。僕も一編書かせてもらった。1月から編集長が五十嵐さんに変わり、『建築雑誌』も結構楽しい雑誌に変身した。そういえば今日昼ごろ庶務から電話があり、僕に荷物が届いていると言う。「何ですか?」と聞くと「ダンボール箱が5つ」と言う。まったく身に覚えが無い。「どこからですか?」と聞くと「外国語研究所」と言う。ますます身に覚えが無い。そうは言っても要らないとも言えず。学生と取りに行く。行って分かった差出人は東工大のスチュワー先生だった。3月で退官なので研究室の本の整理で僕に一部を送ってきたのであった。とりあえず学生に僕の部屋の本棚に並べてもらった。その本を夕食後見渡す。洋書古本屋を渉猟するような楽しさである。PalladioもSelrioもある。スチュワート先生の部屋はとにかく図書館のようだった。その中の本当にごく一部を送ってくれたわけである。ありがたいことだ。なかでもちょっと気になったのはPeter CollinsのArchitectural Judgementなる本。コリンズと言えばChanging Ideals in Modern Architecture(1965)が有名だが、このjudgemntはその6年後71年に書かれたものである。judgementとは彼が建築学を法学のアナロジーで読み解き、建築の判断と法の判断の類似性を指摘したもののようである。前著Changingでも彼は1章を異分野との類比に使っているが、そこでは法学は無かった。彼の新たな興味のようである。今読んでいるスコット(1917)は近代における類比の誤謬を解いたのだが、それでも類比はモダニズムに延々と語り継がれたというわけである。しかし法学との類比とは意外!時間があったら読んでみたい。

建築とジェンダー

On March 3, 2008
by 卓 坂牛

3月2日
書類を取りに午前中事務所に。渡辺さんが一人仕事をしていた。午後早稲田のパワポ作り。夕飯を食べて長野に向かう。新幹線で移動中、ロンドンの友人から電話。来週飲もうとの誘いだがあいにく両方の都合がつかず、また今度。車中、熊倉敬聡、千野香織『新たなジェンダー批評に向けて、女、日本、美』慶応義塾大学出版会1999を読む。早稲田の授業で建築とジェンダーをとりあげたいのだが、一体そんな問いは可能なのか?アートはジェンダーとの関係が強いが建築はそもそも社会構築的とは言えジェンダーとは少々かけ離れている。そう思ってこのテーマを諦めかけていたのだが、少しヒントを発見。例えば、「モダニズムとは異性愛、白人男性こそが『主体』である」というような指摘。確かにそうかもしれない。アメリカのゲイアーキテクトが大量にカミングアウトしたのは70年代だったように思う。ムーア設計の恋人と住む家には一階の真ん中にジャクジーがあった。ジェンダーが住宅プランを自由にしたか?また目を日本に転じれば、家父長制が崩壊していく過程はそのまま戦前戦後の住宅プランの変遷に対応している。父の接客スペースが南、母の厨房は北という平面は、家族のldkが接客スペースにとって代わり、そして父の居る場所はもはや無いのが現代の住宅である。またもう少し観念的に考えれば、フォーティーが言うように有史以来、建築は男性性に支えられてきた。女性的で良い建築など少数の例外を除いて存在しなかった。しかし堅固で頑強という建築本来の男性的属性はフラジャイルな女性的「美」に追い抜かれた感がある。例えば「透明建築」が世を席巻したのはガラス技術の進化のみならず、女性性の優位あるいは男性性の後退と関係しているのではなかろうか?
などなどやはり建築もジェンダーに構築されている部分は多々ありそうである。

差異の根源

On March 2, 2008
by 卓 坂牛

3月1日
家でお手紙を書いたり、早稲田のパワポを作ったりしていた。夕刻、烏賀陽弘道『Jポップとは何か』岩波新書2005を風呂で読む。jポップという言葉の由来は洋楽しか流さなかったJwaveで始めて和楽を流すときにJwabeで流していい和楽を呼ぶ呼称として考え出されたものだそうだ。時1988年。バブルの真っ只中だった。それから音楽業界は様々な変身をとげるようだが、その一つに音楽製作技術がある。それはアナログからデジタルへの変身である。そしてその変身の最大の効果は音楽製作がコンピューターで行なえるようになったことだ。一枚のアルバムを作るのにスタジオを800時間、4千万かけるオフコースのようなアーティストはいなくなった。しかし、それによって音質がどんどん画一化していったという。というのも、音楽がコピーペーストできるようになってしまったからである。
はてさて88年とは僕がアメリカでcadを学び帰国して日建に入った頃である。日建には一台数千万するcadの機械が置かれてはいがた、誰も本気でこれが製図の主流になるなど思っていなかった。ところがいまやどうだろう、製図はもちろん、三次元ドローイングも殆どがデジタル化されている。ここでも音楽同様、コンピューター能力がデザインを決定するような画一化が進行している。かろうじて建築界が救われるのは、最後の制作の現場が建築家に委ねられていないこと。まだまだローテクな職人芸に任せられていることである。そして逆に言うと、建築の差異をかろうじて保てるのはこの部分でしかなくなっていく可能性があるという点である。ちょっとお寒い話である。

隈さんの文章

On March 1, 2008
by 卓 坂牛

2月29日
大学の委員会の所用を済ませ急いで夕刻のアサマに、車中隈研吾の『負ける建築』を飛ばし読む。この人の文章を読むのは『10宅論』以来2回目だが、物事の抽象的な掴みは天才的にうまい。しかし余りに一掴みなので、掴んでないところが気になって仕方ない。こういう言説は小泉的でインパクトがあるし、分かりやすい。こういってはなんだが小泉同様、右も左も分からぬ輩はすぐに食いつく。隈さんもそこを狙っているのだから、それを分かってこの掴みの鋭さを読みとらねば。どうもこうした文章を学術的に真に受けるやつがいるのには困ってしまう。夜、事務所で打合せ。茶室は天井を剥がしたらいろいろ予期せぬ臓物が現れたようだ。デザイン案を修正。リノベーションブレスト、ヴォリュームスタディチェック。

有賀さん

On February 29, 2008
by 卓 坂牛

2月28日
やっと午前中に校正原稿を返送。午後リノベーションのスタディを竹内君とする。コンセプチュアルモデルを一つ作る。家に帰ってイーグルトンの『美のイデオロギー』を読む。夕刻事務所に戻りそのまま有賀さんの送別会。彼女は長谷川逸子さんの所をやめてその後ofdaに来て2年半勤めて、家庭の事情で実家に帰ることになった。中華料理屋で送別。いろいろとofdaに貢献してくれたし、最後の一年に二つの竣工物件を完成させた。ofdaはスタッフを使い捨てにしたくない。その後立派に成長して欲しいと思っている。彼女なら今後きっと伸びる。2次会はブルースパブ。3次会は居酒屋。一人二人と帰ったものの最後まで10人くらいはいたようだ。有賀さんがお別れの言葉で「まだ住宅の仕事をしたかったけれど家庭の事情でやめざるを得ない」と泪を浮かべて語ったのには感無量。是非今後も自分の可能性を追い続けてください。

校正

On February 27, 2008
by 卓 坂牛

出版原稿の第2稿の校正。奥付の校正も郵送されてきた。これによると残念ながら出版日は5月20日である。今年度中の出版はやはり無理のようである。ここまできても生没年の分からない人がいる。『塔の思想』を書いたマグダ・レヴェッツ・アレクサンダー。建築批評家、リアンヌ・ルフェーブル、ガブリエル・ロイトハウザー、マーク・ウィグリー。ルフェーブルのように生存している女性だと年齢を公表しないケースが多く知る方法はもはやない。

八潮

On February 27, 2008
by 卓 坂牛

2月26日
午前中雑用。午後筑波エクスプレスに初めて乗り、そして初めて八潮という場所に行く。日工大の小川さん、茨城大の寺内さん、東北工大の槻橋さん、神大の曽我部さんに会い八潮市役所の方の案内で市内を視察。八潮市とは秋葉原から電車で19分のところにある市。筑波エクスプレスが開通したことで突如東京との距離が近くなり人口が急増している。そのためマンションが増加し、戸建住宅の乱開発などにより景観が崩れそうになっている。そこで市としては八潮市らしい街づくりを思案し小川君に相談したそうだ。小川君の研究室で1年くらい調査したようだが、2年目からはいくつかの研究室が集まり、ワークショップなどを開き、3年がかりくらいでモデル住宅を作るべく彼が計画を練ったようだ。今日は市長、副市長に会い、お話を聞いた。なんとも意欲的で素早い行動をとる行政があるものだ。やはり人口急増で潤っているからだろうか?
夜まで打合せ、北千住で夕食。ここに来ると遅くなる。

母性の喪失

On February 26, 2008
by 卓 坂牛

2月25日
後期日程の入試。朝から雪かき、というか構内歩道にへばりついた氷割り。昼から晴れてきて一安心。
夜、江藤淳『成熟と喪失』河出書房1967再読。「江藤淳」、本名、「江頭淳夫」だったと思うが、僕は大学時代この先生のゼミをとっていた。ゼミのタイトルは忘れたが内容は日本の近代化を当時の外交文章(アメリカのもの)を精読することで明らかにしようとするものだった。今でも頭に焼き付いているのはmodernization(近代化)=westernization(西洋化)というテーゼである。
『成熟と喪失』は子が母性にそむかれ、そしてそむく中で成熟する精神的な成長を、安岡章太郎、小林信夫らの小説を分析しながら跡付けたもの。しかしそのこと自体はむしろ比較的当然の事実であり、ポイントはそうした母性との決別を通して日本のアメリカ化が日本文学の中でどのように表出してきたかを明らかにしている点にある。と僕には読める。なんでこんな本を学生時代以来再度引っ張り出してきて読んでみたかと言うとこの母性との決別という江藤のテーゼを「建築の他者性」というゼミの1テーマの中で議論の中心に据えてパワポを作った学生がいたからである。しかし繰り返しになるが、僕の読む限り、子が母との葛藤のなかで成熟すること自体は別に江藤の専売特許でもなんでもない。そうではなくてそこにアメリカとの関係を持ち込んだことが彼の卓見である。昨日読んだ大衆消費社会との関係で言えば、戦後日本に怒涛の勢いで流入されたアメリカ的豊かさに敏感に反応し、消費の海の中で平衡感覚を失った日本人を察知したことが江藤の慧眼だったと言ってもいい。建築においてもし母性と言うような言葉使うのならば、こうしたコンテクストをどう関連させ得るのか?そここそが問題なのだと思う。さてそれではこのパワポをどう修理しら良いものやら??

大衆消費社会

On February 26, 2008
by 卓 坂牛

2月24日
午後からA0勉強会1年半ぶりにロンドン留学中だった光岡君が復帰。彼にロンドンから送ってもらった「倫理的誤謬」の章をまだ読み合わせているのだからこの本はなかなか面倒臭い内容である。『言葉と建築』より難しいのではと僕が問うと、彼も実例が出てこない観念的な話なのでなかなか内容が掴みにくいと同意していた。勉強会終了後帰宅。風呂に入ってリラックスして飯を食い大学へ出かける。東京駅で初めて気付いたのだが、長野新幹線は強風で大幅に遅れているようである。9時半なのに出発する電車は7時半の遅れた電車である。そのせいか社内は満員。車中、犬田充『大衆消費社会の終焉』中公新書1977という古い新書を読む。地球上に消費を美徳とするような文化が生じたのはこの数世紀のことであり、こうして生まれたホモ・コンスメンスのヘドニズム(快楽主義)から人類は決別しなければいけないという問いを著者は投げかけている。今から30年前僕が高校3年のときにそういう発言があったということを再認識。長野は雪。明日の入試が心配である。北大は既に一日延期を決めいている。

今日は寒い

On February 23, 2008
by 卓 坂牛

朝、明日の勉強会の予習。その後事務所で打合せ。ナカジと青山のヴォリュームスタディ。小倉君は黙々と中国の模型を作っている。今日が最終日。ご苦労様。3人で昼食。午後また明日の勉強会の本を読む。その後早稲田のパワポのためのスキャン。出版社から第二稿が速達で届く。またもや原稿280ページの殆ど全ページに赤が入ってきた。前回の初稿も真っ赤でそれを校正して次は確認程度かとおもいきやさにあらず。その上「第三稿では索引を入れます」という手紙も入っている。この出版社は丁寧に本を作ると以前東大の西村先生が言っていたがその意味がやっと分かった。文字の大きさから図版の位置まで本当にそのチェックの密度は衰えない。4時頃かみさんと家を出て「赤の家」に向かう。夕食に招待された。日建の先輩後輩が10名ほど集まった。今度信大の建築学科分離独立の際に外部評価委員になっていただく亀井さんもいらっしゃった。構造の小堀さん、そして奥様。後輩の中村さん、同期の西村。などなど。自分の設計した建物に他の建築家がくるのは少し赤面だがまあ仕方ない。クライアントが日建の人なのだから。
10時頃全員でおいとま。今日は風が強く本当に寒い。

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